内縁の妻に財産を相続させたいけど・・・
はじめに
婚姻届を提出せず,事実上の婚姻関係になっている方がいます。
婚姻しない事情も様々です。
再婚なので,もう婚姻届けを出さなくてもいいかと思われたり,夫婦別姓をとられるため,などの理由があります。
『内縁の妻(夫)に“相続”させたい』と思った時,
相続させることが出来るのでしょうか?
内縁の夫に亡くなられた場合で考えていきましょう。
内縁関係とはどのような状態のこと?
内縁とは実質的には夫婦関係があっても,法律上は夫婦として
認められない関係のことです。
「事実婚」と言うこともあります。
法律上の夫婦には認められている権利が認められていないことも
ありますが,同様の権利が認められていることもあります。
反対に夫婦としての義務も法律上の夫婦同様にあります。
法律上の夫婦同様の権利義務
1 貞操義務(夫婦がお互いに性的純潔を保つこと)
2 同居,協力,扶助の義務(民法752条)
3 婚姻費用分担の義務(民法760条)
4 日常家事の連帯責任の義務(民法761条)
5 帰属不明財産の共有推定(民法762条)
6 財産分与(民法768条)
7 摘出の推定(民法772条2項)
簡単に言うと,法律上の夫婦同様に不倫してはいけない,夫婦協力して生活をする,家庭のお金は夫婦で分担しましょうなど,と負っている義務は何ら変わりません。
内縁の妻は相続できる?
内縁の妻が相続する権利はあるでしょうか?
残念ながら,内縁の妻には“相続”する権利はありません。
特別法で法律上の夫婦と同様に
1 遺族補償年金を受ける者としての配偶者の権利
2 労働災害の遺族補償を受ける労働者の配偶者の権利
3 退職手当を受ける者としての配偶者の権利
は認められていますが,法定相続人になることはできません。
法律上の夫婦同様,何年も生活を共にしていても,相続することが
出来ないのです。
内縁の妻に財産を渡すには?
長年連れ添ってきた内縁の夫の財産を内縁の妻に渡す方法は
ないのでしょうか?
内縁の妻に財産を渡す方法もきちんとあります。
それは,
1 遺言書を作成し,内縁の妻に渡す内容の記載をする(遺贈)
2 特別縁故者になる
の2点です。
遺贈とは何?
民法964条に『包括又は特定の名義で,その財産の全部または一部を処分することができる』とあります。
処分と書いていますが,財産を渡すことです。
遺言書で法定相続人ではない,内縁の妻に財産を渡すことを“相続”ではなく,
“遺贈”と言います。
また,生前贈与といって,生きている間に財産を渡すことも可能です。
ただし,法定相続人には遺留分といって,法律上確保された一定割合の相続財産があります。遺留分には注意が必要です。
特別縁故者になるには
まず,特別縁故者とは
1 被相続人(亡くなった方)と生計を同じくしていた方
2 被相続人の療養看護に努めた方
3 特別に縁故があった方
が該当します(民法958条)。
家庭裁判所に特別縁故者の申立をする必要があります。
まとめ
内縁の妻に財産を渡す方法がありますが,遺言書はきちんと書かないと無効になってしまうことがあります。
また,遺留分のことでトラブルになることがよくあります。
特別縁故者になろうと思っても,いくつかの条件が揃わないといけません。
実際には様々な事情が関わってきますので,専門家である弁護士に相談してください。
トラブルがあってから,弁護士に相談するのが一般的かもしれません。しかし,トラブルを回避するために弁護士に相談する方法もあります。
長年連れ添ったパートナーとの思い出を大事にするために,しっかりトラブルは回避しましょう。