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離婚した妻が再婚すると養育費は払わなくても大丈夫

2020-06-05
離婚

再婚という事情によって養育費は変化するか?

一般的に、子どもがいる夫婦が離婚をして、母が子どもの親権者となる場合には、父は子どものために養育費を払い続けなければなりません。
しかし、その後母が別の男性と婚姻した場合には、今後はその男性が子どもも含めて扶養すればよく、離婚した男性は養育費を払わなくてもよくなるのではないかと考える方もいるでしょう。
そこで、離婚した(元)妻が再婚すると、養育費を支払わなくてよいのか否かについて、解説していきます。
 

養育費とは

養育費とは、民法766条1項所定の「子の監護に要する費用の分担」として、家庭裁判所が、非監護親から監護親に支払いを命じる未成熟子の養育に要する費用です。
養育費は、子どもに必要最低限の生活費を支払う義務ではなく、非監護親の生活と同程度の水準の生活を送らせるために負担をしなければならない費用です。
養育費の中身は、子どもの衣食住の費用、教育費及び医療費などです。
 

養育費はどうやって決まる?

従前、家庭裁判所の実務において、養育費の算定は、子どもが義務者(非監護親)と同居していると仮定すれば子どものために費消されていたはずの生活費がいくらであるのかを計算し、これを義務者と権利者の収入の割合で按分し、義務者が支払うべき額を定めていました。
この考え方自体は合理的でしたが、個々の父母ごとに、個々の事情を考慮して養育費を算定することは審理の長期化を招くという弊害がありました。そこで、養育費の簡易迅速な算定が可能になるような算定表が提案されました。
この算定表を使えば、父母双方の収入と子どもの年齢・人数という情報だけで、容易に養育費を計算できるようになりました。
 

養育費は、一旦決めたら変えられない?

養育費は、一度決定した場合、原則としてそれを変更することはできません。ですので、養育費を決めるにあたっては、それをのちに簡単には変更できないものと思って、慎重に判断する必要があります。
ただし、当事者間で改めて合意をした場合には、当然変更することは可能です。また、養育費を決めた当時の事情から変更があったときは、養育費の金額を変更することができる場合があります。
親権者(妻)側の再婚というできごとも、事情の変更といえるのであれば、一度決めた養育費を変更できることになります。
 

再婚が事情の変更といえるためには?

元妻の再婚者相手は、再婚という事情だけでは、妻の連れ子に対する扶養義務を負いません。
しかし、妻の連れ子と「養子縁組」をして、連れ子の養親となった場合には、再婚相手は連れ子に対して、父親としての扶養義務を負うこととなります。
この場合、離婚をした夫からみて元妻と、再婚相手が、一次的な扶養義務を負うこととなり、離婚をした夫は二次的に扶養義務を負うにとどまるということになるので、養育費を減額することが可能となります。
ただし、再婚相手が、高齢、あるいは持病があるなどの事情により、収入が乏しいあるいはまったくないという場合には、再婚相手が妻の連れ子を扶養することが現実にできませんので、離婚した夫は、元妻の再婚という事情にかかわらず今までどおりの養育費を支払わなくてはならない可能性があります。
 

養育費を変更するための手続

離婚をした夫は、元妻が経済力のある男性と再婚した場合には、養育費を減額することが可能だということが分かりましたが、実際に減額するためには、どのような手続きを踏めばいいのでしょうか。
養育費は、当事者間の合意があれば、変更することができますので、仮に当事者間の話合いで減額することができる場合には、その結果を合意書などに残す方法での減額が可能です。
仮に、当事者間での話合いで解決できない場合には、養育費の減額を希望する元夫側としては、家庭裁判所に養育費の減額調停を申し立てるという手段があります。調停の場では、中立公平な立場である調停委員を交えて、今後の養育費について話合いをします。

著者

後藤千絵先生
弁護士

後藤ごとう 千絵ちえ

京都府生まれ。滋賀県立膳所高校、大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に総合職として入社。

30歳を過ぎてから法律の道を志し、2006年に旧司法試験に合格。

08年に弁護士登録し、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所を設立。

離婚や相続など、家族の事案を最も得意とし、近年は「モラハラ」対策にも力を入れている。

著作に「誰も教えてくれなかった離婚しないための結婚の基本」(KADOKAWA)、『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』(三笠書房)がある。

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