婚姻の届出を出して法律上の夫婦になると、配偶者は自動的に相続人となり相続権が発生します。
一方、事実婚とも言われる内縁夫婦の場合は、遺言書でもない限りは一切の相続権がありません。
では、慰謝料の請求権はあるのでしょうか?
今回は、婚姻届を提出しておらず、いわゆる内縁関係にあった妻が浮気をしていることがわかった場合、夫は妻に対して慰謝料の請求は可能なのか、可能であればどのような準備が必要なのかをご紹介します。
内縁関係とは?法律婚との違いを解説
婚姻届を提出し、入籍の手続きを行う法律婚の大きな特徴は、婚姻により氏が変わる、配偶者の3親等内の親族が自分の親族になる、配偶者の相続人になる、などが挙げられます。
しかし、内縁関係ではこれらの効力は認められていません。
夫婦別姓を希望するカップルなど理由は様々ですが、夫婦として共同生活の実態があるなどいくつかの定義に当てはまれば法的に内縁関係と認められ、法律婚に準ずる効力が得られる場合があります。
内縁関係の定義について
法律婚との違いを述べましたが、内縁関係とは具体的にどのような条件を示すのか、その定義を見ていきましょう。
共同生活を送っている
生計を共にし、共有財産があるなど婚姻関係のある夫婦と変わらない共同生活を送っていることが前提となります。
具体的な期間は定められていませんが、だいたい3年以上同居していれば内縁関係と認められることが多いようです。
互いに婚姻の意思を持っている
夫婦同然の共同生活を送り、なおかつ、お互いが相手と結婚したいと思っていることが大切です。
これといって結婚の意思もなく共同生活を送るだけでは、学生が恋人と同棲している状態と変わらず、内縁関係とは認められません。
公的な手続きを行っている
婚姻届の提出以外にも公的に夫婦と表明できる方法があります。
同一世帯の場合、住民票では「同居人」といった続柄になりますが、届出をすると「未届けの妻(夫)」といった続柄に変更可能です。
さらに、相手を第3号被保険者として社会保険に登録したり、内縁関係を証明する契約書を互いに交わしたりすることも公的に内縁関係を証明できるものと言えます。
結婚式を挙げたり夫婦として行事に参加する
挙式や新婚旅行に出かけたり、写真で記録を残したり、その時の領収証などを保管しておくと内縁関係の証明になります。
また、親族の冠婚葬祭などの行事に夫婦として参加して社会的に認知されていると認められやすいです。
子どもを認知、養子縁組している
夫婦同然の共同生活を送り、生まれた子どもを認知していたり、相手の連れ子を養子縁組していたりする場合も内縁関係を認められる大きな要素となります。
内縁の妻の浮気、慰謝料は請求できるのか
法的に認められた内縁関係とは法律婚に準ずる効力が得られるため、夫婦間の貞操義務が認められます。
要件を満たし、公的にも内縁関係と認められた場合、内縁の妻の浮気は法律婚と同様に不貞行為とみなされるため、夫は慰謝料の請求が可能です。
また、妻の浮気相手が内縁関係にあったことを知っていたり、知り得る状況にあったりする場合は浮気相手にも慰謝料を請求できます。
妻が浮気を認め、慰謝料の支払いに応じればすぐに済みます。
しかし、内縁関係自体や浮気を認めない場合は、内容証明郵便制度を利用し妻や浮気相手に慰謝料請求することで交渉に応じてもらいましょう。
それでも交渉が進まない場合は裁判所に訴訟や調停を申し立てることになります。
慰謝料請求に必要なものとは?
内縁の妻に浮気の慰謝料を請求する場合、不貞行為の証拠はもちろんですが、まず内縁関係にあることを証明する必要があります。
戸籍で明らかになる法律婚と違い、客観的に見て内縁関係にあると認められる状況証拠を集めなければなりません。
内縁関係を証明する資料
家計簿や生活費の支払明細など、家計を共にしているとわかる資料や結婚式を挙げた際の領収証、「未届けの妻(夫)」といった続柄の記載された住民票や、被扶養者となっている場合は健康保険証などが有効です。
不貞行為があったことを証明する資料
妻が不貞行為を否定している場合、不貞を立証する必要があります。
不貞行為とは浮気相手と性的関係を持ったことを証明できるものでなければならず、食事などのデートの様子くらいでは認められません。
浮気相手と性的関係を持ったことを推察させるような、具体的なやり取りがわかる電話やメール、LINEの記録、画像などが有効になります。
また、浮気相手とラブホテルへ入る様子や長時間滞在していることがわかる写真や動画、ラブホテルの領収証なども証拠資料になりますが、自分で入手するのが難しい場合もあるので、浮気調査や素行調査などが得意な探偵事務所などに費用面も含めて検討してみてください。
浮気相手にも慰謝料を請求する場合
浮気相手が内縁関係にあったことを知っていたり、知り得る状況にあったりする場合は、浮気相手にも慰謝料の請求が可能ですが、その場合、内縁関係を証明する資料、不貞行為を証明する資料に加えて浮気相手が内縁関係にあったことを認識しているようなやり取りがわかる電話やメール、LINEの記録が必要になります。
慰謝料が請求できない場合とは?
内縁の妻の浮気が発覚しても慰謝料を請求できない場合もあります。
内縁関係の定義に当てはまらなかったり、資料が集められずに内縁関係を証明できなかったりすると内縁関係自体が認められず、慰謝料請求ができないこともあります。
ほかにも、夫婦で連絡を取り合っていなかったり別居状態が続いていたりと内縁関係が破綻していると判断されるような状況での妻の浮気や、相手が既婚者だと知りながら内縁関係に至った場合、一方的に内縁関係を解消しても慰謝料の請求が認められない可能性があります。
しかし、どこから関係の破綻と捉えるか、当事者の意識の違いや状況によって一概には言い切れず、また、既婚者だとわかっていながらも内縁関係に至った時点で相手の婚姻関係が破綻していた場合は重婚には当たらないと判断される場合もあるため、慎重に進める必要があります。
迷ったら弁護士に相談してみる
内縁関係を証明できる資料が揃わなかったり、妻の不貞行為の証拠が思ったように集められなかったりすると慰謝料の請求は難しいと思いがちですが、場合によっては可能となることもあります。
慰謝料の請求に不安がある場合は一度、法律事務所や弁護士に相談することをおすすめします。
近頃は初回なら無料で相談できるところも少なくないので、気軽に問い合わせてみるといいでしょう。
一見、慰謝料請求は難しいと思われるものでも弁護士に任せれば内縁関係の証明が可能だったり、内縁関係の破綻のタイミングによっては慰謝料の請求が可能だったりすることもあります。
法律婚でも内縁関係でも夫婦の事情は入り組んだものが多く、確実に慰謝料を請求したいのなら対処に慣れた弁護士に任せるのが得策です。
今回は、婚姻届を提出しておらず、いわゆる内縁関係にあった妻が浮気をしていることがわかった場合、夫は妻に対して慰謝料の請求は可能なのか、可能であればどのような準備が必要なのかをご紹介しました。
正式な配偶者ではなく内縁関係にあっても、浮気を理由に慰謝料の請求は可能です。
弁護士に相談すればスムーズに交渉はスムーズに進むので、諦めずにまずは行動に移すことが肝要です。