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「なんとなく合わない」で離婚はできますか?

2020-03-13
離婚

つきあっているときはわからなかった配偶者の性格が、結婚してから露呈することは珍しくありません。結婚生活を続けていくうちに会わないと感じるところが多くなり、離婚を視野に入れるほど深刻なものになっていくのです。

DVや浮気などの明確な離婚理由がなく、ただ「なんとなく合わない」という理由で離婚するにはどうすればいいでしょうか。
 

「性格の不一致」で離婚できる

協議離婚においては、どのような理由であっても双方の合意があれば離婚できます。当然ながら「なんとなく合わないから離婚したい」というのも、相手が同意さえすれば離婚できるのです。

しかし、問題は相手がその理由で同意するかどうかです。離婚したくなければ「悪いところは直すから、どんなところが合わないと感じるのか教えてほしい」と、説得を始めるかもしれません。そうした相手の説得に反論できる材料がなければ、やはり相手の合意を得るのは難しいといえます。

ただし、裁判で離婚する場合は、次にご紹介する5つの離婚事由に該当しなければ離婚できません。
 

  • ①不貞行為があったとき
  • ②悪意を持って結婚生活を放棄したとき
  • ③3年以上生死不明の状態にあるとき
  • ④重い精神病にかかったとき
  • ⑤その他、婚姻生活を継続しがたい重大な理由があるとき

 
「なんとなく合わない」の場合、おそらく⑤の自由が該当する可能性があります。なんとなく合わない内容が、婚姻生活を継続しがたいレベルかどうかが争点となるでしょう。
 

「なんとなく」の正体をつきとめる

結婚は、生まれ育った家庭環境や性格の違う人同士が一緒に暮らしていく以上、価値観の違いや性格の違いは必ず出てくるものです。しかし、そうした個性の違いを楽しみ、また双方が妥協できるポイントを探るのも結婚生活です。「なんとなく合わない」と感じるのは、お互いの価値観を理解できなかったり、どうしても許せないところがあったりしたときではないでしょうか。

そこで、「なんとなく合わない」と感じているポイントを考えてみることです。具体例を挙げると
 

  • 片付けなど、同じことを何度注意しても改善されない
  • 食事のマナーが悪い
  • 家事に完璧さを求めるが自分は家事をしない
  • 夫の趣味はアウトドア、妻の趣味がインドアなどで趣味が合わない
  • 子どものおむつ替えや遊びなど手伝ってくれない
  • 妻よりも夫の親や兄弟の意見を尊重している
  • 子どもに真似してほしくない言葉遣いをしている
  • 生活費まで娯楽につぎ込む
  • 「買い物に行く」と言って実際はパチンコに行くなど、小さな嘘を繰り返す
  • 料理の味付けが合わない

 
いかがでしょうか。心当たりがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。「なんとなく」の正体はこうした些細な不満の積み重ねによって起こります。DVや浮気といった不法行為なら決定的な離婚理由でなくても、このような不満が積み重なれば、限界が来るものです。
では、「なんとなく」の正体を突き止めた後にするべきこととは何でしょうか。
 

「合わない」ところを合わせられないか話し合う

合わないなと感じるポイントを突き止めたら、相手にそれを伝えることです。そして、合わせられないか、相手が改善できるポイントはないかじっくり話し合ってみましょう。その際、改善できなければ離婚を考えていると伝えてみるのも一つの手です。

それでも相手が話し合う姿勢を見せなかったり、話し合った後も改善が見られなかったりすれば、離婚の準備を始めてもいいと思います。ただ、改善の意思を示した場合は、一定の猶予期間をつくり、相手がどのように変化したか様子を見てみましょう。
 

調停や裁判で離婚をする場合

先述した通り、配偶者と合わないと感じたときは、少しずつすり合わせていく努力が必要です。その努力をせずに「性格が合わないから離婚したい」といっても、裁判所としては「婚姻を継続しがたい重大な事由」とは認めません。

それでも性格の不一致を理由に離婚したい場合は、具体的にどのような場面で、どのような会話があったかなどをメモ書きや、ボイスメモや動画などで記録に残しておくことをおすすめします。

つまり「価値観や育った家庭環境が違うことを十分理解したうえで、夫婦関係を継続しようと努力したものの、結果的にそれがかなわなかった。一緒暮らすことはもう難しい」ことを、裁判所がわかるようにすればいいのです。

特に、「相手の性格が原因で心療内科に通い始めた」「相手の性格が客観的に見て異常」というように、これ以上結婚生活を続けるのは難しいと判断された場合には、離婚が認められやすくなります。こうしたよほどの事情がなければ、夫婦での話し合いをもつべきでしょう。それでも離婚を希望しているのであれば、「なんとなく合わない」と感じるポイントを一つひとつ証明してくしかありません。

万が一、相手を説得するのが難しいと感じたときは、離婚に詳しい弁護士にご相談ください。場合によっては相談者に代わって相手と離婚に関する話し合いを進めていくこともできますし、調停になった場合も、弁護士のサポートを受けられます。離婚について不安な点があればお気軽にご相談ください。

著者

後藤千絵先生
弁護士

後藤ごとう 千絵ちえ

京都府生まれ。滋賀県立膳所高校、大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に総合職として入社。

30歳を過ぎてから法律の道を志し、2006年に旧司法試験に合格。

08年に弁護士登録し、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所を設立。

離婚や相続など、家族の事案を最も得意とし、近年は「モラハラ」対策にも力を入れている。

著作に「誰も教えてくれなかった離婚しないための結婚の基本」(KADOKAWA)、『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』(三笠書房)がある。

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