配偶者が死亡しても、義理の両親や義理の兄弟姉妹といったいわゆる「姻族」との関係は続きます。そのため、義理の両親の介護や義理の兄弟姉妹間のトラブルに巻き込まれる可能性が高く、姻族関係を絶ちたいと考える人も少なくありません。
しかし、婚姻関係を結んだまま配偶者が死亡してしまった場合、姻族関係だけを絶つことは可能なのでしょうか?
今回は、“死後離婚”とも呼ばれる姻族関係終了届についてご紹介します。
死後離婚とは?
テレビや雑誌といったメディアで取り上げられたことで世間の注目を集めた“死後離婚”ですが、これは造語であり、実際には配偶者の死亡後に離婚届の提出はできません。
死後離婚とは「姻族関係終了届」を提出し、手続きを取ることを指します。
この届け出を出すことで姻族との関係を絶てるため、メディアがわかりやすく死後離婚と名付けたのでした。
姻族関係終了届は配偶者の死後であればいつでも提出可能で、自身の戸籍謄本と死亡記載のある配偶者の戸籍謄本、認印を用意するだけで手続きが完了します。
姻族関係が絶たれたことは姻族には知らされず、通知する義務もありません。
死後離婚のメリット
姻族関係終了届を提出し、死後離婚をすることのメリットとはどんなものがあるのでしょうか?
姻族との縁が絶てる
義理の両親や義理の兄弟姉妹と折り合いが悪いという話はよく聞きます。
それでも耐えてこられたのは配偶者がいたから、という人も少なくないでしょう。
その配偶者が死亡してしまい、もう無理して耐える必要性を感じなくなるのは当然の流れといえます。今後、義理の両親の介護や墓の管理、金銭の援助などで頼ってきた場合でも「姻族関係は終了している」と断ることが可能です。
墓を分けられる
姻族関係が良好だった場合でも義理の両親と一緒の墓に入ることに抵抗のある人もいるでしょう。姻族関係があるうちは墓の問題は必ずついて回ります。
場合によっては姻族の墓の管理まで押し付けられてしまう恐れもあります。
特に、配偶者とは仮面夫婦で離婚も時間の問題だった、といった状況だと精神的苦痛は大きいでしょう。死後離婚をしてしまえばそういったしがらみから解放されるだけでなく、自身の死後、どの墓に入るか自由に選択可能です。
相続や遺族年金の受給には影響がない
通常の離婚と違い、配偶者の死亡時は婚姻関係が継続していたという点が死後離婚の大きな特徴です。
そのため、遺産相続や遺族年金の受給には何ら影響がなく、死後離婚後も配偶者として受け取ることができますし、金額にも変更はありません。
死後離婚のデメリット
メリットを見ていくといいことばかりのように思える死後離婚ですが、当然ながらデメリットもあります。
撤回は不可能
姻族関係終了届を提出するだけで手続きが簡単に済ませられる死後離婚ですが、その反面、一度提出してしまうと取り消しは不可能です。十分考慮したうえでの決断であれば問題ありませんが、ちょっとした言い争いから衝動的に手続きを取ってしまうと後で後悔する可能性もあります。
一度絶ってしまった縁は二度と元に戻らないことを覚悟しておきましょう。
引っ越しが必要な場合もある
縁を絶っていることを姻族が知っていても知らなくても、日常的に顔を合わせるのは精神的に負担となります。
義理の両親と同居している場合はもちろん、すぐ近くに住んでいる場合でも引っ越しを検討しなくてはならず、住み慣れた環境を離れる覚悟が必要になります。
死亡した配偶者の法事には参加できない
姻族との縁を絶つということは当然、死亡した配偶者との縁も切れることになります。
配偶者の墓参りはもちろん、法事なども一切声がかからなくなること頭に入れておきましょう。
子どもへの影響は?
自身に子どもがいた場合、死後離婚はどんな影響があるのでしょう?
姻族関係終了届は、自身と姻族との関係を絶つための手続きであり、自身の子どもとは何の関係もありません。
したがって、子どもの姓や戸籍には影響がなくこれまで通りですし、子どもと姻族とは今後も親戚関係が継続します。
ただし、子どもの姓を自身の旧姓に変更する場合は別途手続きが必要になり、金融機関などでの名義変更手続きも発生するので親子間でよく話し合う必要があるでしょう。
また、義理の両親は子どもにとって祖父母にあたるため、扶養義務と相続の権利があります。自身は無関係となっても子どもは姻族との関係が続くことを考慮しなくてはなりません。
まとめ
今回は、“死後離婚”とも呼ばれる姻族関係終了届についてご紹介しました。
以前より姻族との関係が良くなかった場合はもちろん、これまで良好な関係を築けていたと思っていても、突然の配偶者の死で姻族関係に変化が生じるケースは少なくありません。
姻族関係終了届を提出して死後離婚をしてしまえば遺産相続の権利や遺族年金の受給資格を持ったまま、関係を絶つことができます。
ただし、撤回は不可能であったり、子どもと姻族との関係は続いたりと注意しなければならない点もあるので、十分に考慮して判断する必要があるでしょう。