当事務所に寄せられたご質問にお答えいたします。
40代男性。妻とは性格の不一致で3年前に離婚しました。離婚調停で、慰謝料を分割で支払うことに合意し、毎月振り込みを続けていました。ところが最近になって、医師からうつ病の診断を受け、治療に専念するために退職を余儀なくされました。無職になれば慰謝料を払い続けるのは現実的に困難です。一度確定した慰謝料はもう減額できないのでしょうか?
離婚当初は支払えると思って合意したものの、転職や体調不良など、思わぬ事態により収入減となる可能性はゼロではありません。そのような時、毎月払い続けている慰謝料を少しでも減らしてもらう方法はあるのでしょうか。
基本的に減額は難しい
残念ながら、一度確定した慰謝料を減額してもらうことは、よほどの事情がない限り不可能と言わざるを得ません。一度慰謝料の支払い義務が認められたら、確実に支払い続けなければなりません。単純に「お金がないから」、「再婚して家族が増えたから」などの事情で減額してもらうこともできないと考えた方が良いでしょう。
例外として、離婚時に作成した「離婚協議書」に、将来的に分割払いが困難になったときを想定した内容を盛り込んでいれば減額の余地があるかもしれません。しかし、そのような取り決めがなければ、慰謝料の減額は難しいのが現実です。
バックレるとどうなるか
どうしてもお金を工面できず、支払いが滞ったり、電話番号や住所を変えてバックレたりした場合、強制執行により財産を差し押さえられる可能性があります。
離婚協議書を公正証書にすると、書かれている内容は裁判の判決と同等の効果を持ちます。支払いが滞った時点で預貯金、給与、不動産などの財産を差し押さえられるので、バックレだけはやめた方がいいでしょう。なお、離婚協議書を公正証書にしていない場合、慰謝料請求の裁判を起こされる可能性があります。
とはいえ、会社が倒産したり体調をして働けなくなったりして、どうしても慰謝料を支払えないとき、どのように対処すればいいでしょうか。
誠意を持って減額交渉するしかない
現実的に慰謝料の支払いが難しい時は、相手に誠意をもって減額交渉するしかありません。減額に合意するかしないかは相手の気持ち次第ですが、たとえ慰謝料が未払いとなり強制執行したとしても、未払い分を回収できる見込みはないと判断されれば、減額に同意してくれるかもしれません。
交渉の仕方としては、一定期間支払いを猶予してもらうか、分割払いから一括払いにする代わりに総額を少なくしてもらうなど、支払い方法についていくつか選択肢を用意して相手に選んでもらう方法もあります。
ただ、一度は確定した慰謝料を減額するのは、相手方にとっても気分のいいものではありません。どうしても慰謝料を減額してほしい時は、相手方に交渉する前に弁護士にご相談ください。詳しくお話を伺い、適切なアドバイスをさせていただきます。