離婚が珍しくない時代になっている一方で、離婚による「戸籍」や「氏(苗字)」の変化を気にする方が増えています。そこで、離婚後の戸籍と氏(姓・名字)についてのルールや手続きの流れを解説します。
離婚後の氏(姓・名字)はどうなるの?
離婚の氏(姓・名字)の取り扱いについては、3つのパターンがあります。
1:婚姻時に氏を変えており、離婚後は婚姻前の氏に戻す
簡単にいうと、結婚によって夫の氏を名乗るようになったが、離婚後は以前の氏(旧姓)に戻る、というケースですね。これを「復氏」と呼び、離婚における一般的な手続きのひとつです。ちなみに婚姻では、夫か妻の氏のどちらかに統一しなくてはなりません。これは民法750条が根拠です。
“民法第750条(夫婦の氏)
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。”
2:婚姻時に氏を変えているが、離婚後も引き続き同じ氏を称する
離婚後に相手方の苗字をそのまま名乗り続けたい場合は、「婚氏続称制度」を利用することで復氏を回避できます。具体的には、本籍地またな届出人が住んでいる市町村の役所に「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」を提出します。なお、この手続きは離婚した日から3か月以内に行わなくてはなりません。苗字が戻ることで、離婚したことを知られたくない……といった場合には、忘れずに手続きを行うようにしましょう。
また、うっかり手続きを忘れていて離婚から3ヶ月が経過してしまった場合でも、復氏を回避できます。ただし、戸籍法107条1項に基づき、家庭裁判所に「氏の変更許可の申立て」を行う必要があります。
“戸籍法 第107条
やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。”
ここで注意したいのが「やむを得ない事由」を証明する必要があることです。例えば「復氏してしまったことにより、生活で何らかの不利益が生じている」ということを説明しなくてはなりません。
3:婚姻時に氏を変えておらず、離婚後も引き続き同じ氏を称する
簡単にいうと、1の逆パターンですね。婚姻によって苗字の変化がないので、特に何もする必要がありません。日本では、夫側の大半がこれに該当するでしょう。
離婚後の戸籍はどうなる?
戸籍についても、氏と同様に3つのパターンがあります。
1:離婚後に復氏(もとの苗字に戻る)を行う場合
婚姻によって氏が変わった=相手方の戸籍に移っているため、復氏と同時に旧戸籍(両親の戸籍)に戻ります。これを「復籍(婚姻前の戸籍に戻ること)」と呼びます。
2:離婚後に復氏を行わず、そのままの苗字を使う場合
復氏を行わない場合は、自分を筆頭者とした新しい戸籍を作ります。
3:離婚後に復氏を行うが、復籍しない場合
離婚届出用紙の「婚姻前の氏に戻る者の本籍」欄に存在する「新しい戸籍をつくる」という項目にチェックすれば、復氏を行い、なおかつ新しい戸籍を編製できます。既に両親がなくなっており、除籍されているようなケースでは、こちらの方法を選択することになるでしょう。
子どもの氏や戸籍はどうなるの?
原則として、子供の氏や戸籍は、両親の離婚による影響をうけません。つまり、「婚姻中のまま」なのです。妻が離婚によって復氏・復籍を行っても、子どもの性は夫側の氏を名乗り、戸籍も夫側にあります。
これを変更するには、家庭裁判所に対し「子の氏の変更許可の申立て」を行ったうえで、新しい戸籍を作らなくてはなりません。少し複雑ですが、「子どもの氏や戸籍の変更は、家庭裁判所への申し立てと新戸籍の編製が必要」と覚えておいてください。もし不安がある場合は、離婚に強い弁護士に相談してみましょう。