一般的に離婚は、夫婦間の話し合いによって成立します。これを「協議離婚」と呼び、離婚の8割以上が協議離婚だといわれています。しかし、全ての夫婦が話し合いで決着をつけられるわけではありません。当人同時の話し合いで決着がつかない場合は、裁判所の調停員を間に挟む「離婚調停」に発展するわけです。
では、離婚調停でも決着がつかないとしたら……。その後は、少し面倒な手続きが待っています。
離婚調停不成立後は「離婚裁判」か「協議離婚」
日本における離婚の方法は、以下の4つになります。
・協議離婚(夫婦の話し合いによる離婚)
・離婚調停による離婚
・審判離婚による離婚
・裁判離婚(家庭裁判所で裁判を行った末の離婚)
ただし、「審判離婚※」は特別な事情がない限り選択されません。その割合は、離婚全体の0.1%未満です。そのため、離婚調停が不成立になったあとは、「離婚裁判」か「協議離婚」かの2択になるでしょう。
※審判離婚とは…
調停で当事者間の合意が成立しなかった場合に、家庭裁判所が離婚が相当と判断したときに認められる離婚
平成21年度の厚生労働省「離婚に関する統計」によれば、審判離婚は0.1%で非常に稀である
参考:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/rikon10/dl/gaikyo.pdf
協議離婚の概要と流れ
冒頭でも述べたように、協議離婚はお互いの話し合いがベースです。離婚の方法としては最もポピュラーで、うまく進めばお互いに労力や手間をかけずに離婚を成立させられます。協議離婚の流れとしては、以下のようなものが一般的でしょう。
○協議離婚の流れ
1.お互いの気持ちを確認(離婚の意思を確認)して合意する
2.離婚条件をリストアップと話し合い
・親権者はどちらか(未成年の子どもがいる場合)
・養育費の金額と支払いについて
・子どもとどの程度の頻度で会うか(面会交流)
・夫婦の共有財産をどう分けるか(財産分与)
・外で働いていた夫(妻)の年金を専業主婦である妻(夫)とどう分けるか(年金分割)
・不貞行為やDVなどがあった場合、その慰謝料について
・その他、特に決めておきたい事柄について(連絡方法など)
3.離婚条件で決めた事柄が履行されるよう「離婚協議書」や「公正証書」を作成する
4.離婚届を提出する
協議離婚では、主に2の離婚条件についての話し合いが中心になります。
しかし、条件面で合意できないからこそ離婚調停に持ち込んだはずですよね。
したがって、調停が不成立に終わったあと再度協議しても、合意できる可能性は低いかもしれません。
公正かつ客観的な視点をもった第三者(弁護士など)を介しての話し合いが必要になってくるでしょう。
裁判離婚の概要と流れ
協議や調停でも合意できないときは、裁判所の判決によって離婚を成立させることがあります。
これを裁判離婚(判決離婚、和解離婚)と呼びます。
ただし裁判離婚は、法律で認められた離婚の理由(=法的離婚事由)が必須です。これは民法770条に明記されています。
“(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。”
ちなみに、実際の離婚自由としては「暴力」「長期にわたる別居」「不貞行為(不倫など)」「その他」の4つが実情に近いです。では次に、裁判離婚で離婚が成立するまでの主なステップを紹介します。
○裁判離婚の流れ
1.訴訟提起(夫婦どちらかが住所を管轄する家庭裁判所に提起)
2.裁判期日の決定と呼び出し(相手方に口頭弁論期日呼び出し状が届く)
3.口頭弁論(月1回のペースで数回)
4.裁判終了(判決もしくは和解)
5.離婚成立
6.離婚届提出
裁判離婚は、協議離婚や調停とは異なり、沢山の書類や手続きが必要です。例えば2では、訴状に対する反論である「答弁書」を作成しなければなりません。また、3では自分の主張を裏付ける書面(証拠)や人の手配も必要になります。さらに3の中で行われる「本人尋問」では、あらかじめ作成した「陳述書(離婚までの経緯をまとめた書類)」をもとに、さまざまな質問をやりとりします。こういった手続きは弁護士を介して行われるのが一般的です。
離婚調停不成立後は早めの相談を
このように離婚調停が不成立に終わると、裁判離婚に移行する可能性がでてきます。
裁判離婚は、書面の準備や証拠集め、実際の裁判でのやり取りなど、専門家でなくて対応できない事柄が多いもの。つまり、離婚に強い弁護士の力が必須なのです。離婚を成立させ、新たな人生の第一歩を気持ちよく踏み出すためにも、早めの相談をおすすめします。