2つの場面の共同親権

共同親権というと、現在の民法では婚姻中の父母が協力し合って子どもを育てる場面を想定しています。
これに対して、昨今、離婚した父母が子どもに対して対等に養育に関わるという意味での「共同親権」が脚光を浴びています。
そこで、ここではこの2つの共同親権について解説していきます。
 

婚姻中の父母の親権

 

親権とは

親権とは、成年に達していない子どもの利益のために、監護・養育を行ったり、子の財産を管理したりする権限であり義務をいいます。
その内容としては、以下のものがあります。

  • 居住場所の指定、身の回りの世話、教育、身分行為の代理などの身上監護権
  • 法律行為の同意や代理などの財産管理権

 

同時親権、共同親権の原則

婚姻中の父母は、同時に親権者となり(同時親権 民法818条1項)、しかも共同で親権者となる(共同親権 同条3項)のが原則です。
父母が共同で親権を行使するといっても、あらゆる場面において共同名義である必要はなく、一方が決め他方が同意するという形での単独名義でも構いません。
 

共同親権の例外

婚姻中の父母は子どもに対して共同で親権を行いますが、例外的に制限される場合があります。
 

①親権喪失

虐待や悪意の遺棄等より父母による親権行使が著しく困難または不適当なため子どもの利益が著しく害される場合には、親権喪失の審判がなされ、強制的に親権が剥奪されます(民法834条)
 

②親権停止

父母による親権行使が困難または不適当であるため子どもの利益が害される場合には、親権停止の審判がなされ、2年以内の期間中、親権が行使できなくなります(民法834条の2)。
 

③管理権喪失

父母の管理権の行使が困難または不適当であるため子どもの利益が害される場合には、管理権喪失の審判がなされます(835条)。
上記①②の対象が親権であることとは異なり、子どもの監護養育には問題ないが、財産管理等について任せるのが適当でない親権者の管理権だけを喪失させるものです。
 

④事実上親権を行使できない場合

父母の一方が長期旅行、所在不明、刑務所収容、重病や精神疾患による長期入院等の事情により事実上親権者としての義務を果たせない場合には、他方が単独で親権を行使することができます(818条3項但書)。
 

⑤監護権者を一方に定める場合

子どもの身体上の監督保護する権利を監護権といいます。監護権は親権に含まれるため、通常は親権者が監護権を持つことになります。
しかし、婚姻中であっても別居している場合には夫婦のどちらかが子どもを連れて生活することになります。この場合にいずれが監護権を持つのか決めることがあります。その結果、監護権を持たない親は婚姻中であっても親権の一部が制限された状態になります。
 

離婚後の共同親権

父母が離婚した場合は、単独親権となり、離婚の際に、必ず親権者を定めなければなりません(民法819条1項)。その後、必要がある場合は家庭裁判所の審判により親権者の変更ができますが、他方に親権が移るに過ぎません。つまり、現在の民法では離婚後の共同親権は認められていないのです。
 

親権と監護権の分離

離婚後の共同親権が認められない以上、親権を得なかった親は子どもとのつながりが希薄になるおそれがあります。
そこで、離婚後も親として子どもとの関わりを維持したいと考える場合に、協議によって親権者(多くは父)と監護者(多くは母)を分けるという方法がとられることがあります。
 

メリット
  • 父母相互へのプレッシャー

この方法によれば、子供は普段は監護者である母と暮らすが、親権を父に残すことで父も子育てに参加している意識をもち、結果、父による養育費不払いを避けることが期待できます。他方、母親としても養育費を確実に受け取るため子どもと父親の面会交流に進んで応じることが期待できます。

  • 親権争いの緩和

親権と監護権を分けることで「両者引き分け」という状態になり、熾烈な親権争いを避けることができるのもメリットです。
 

デメリット
  • 戸籍上には監護権者の記載がない

戸籍上には監護権者を記載する欄はなく、普段子供とは一緒に生活していない非監護権者が親権者として記載されるのみです。

  • 財産管理の限界

監護者には財産管理権がありません。このため、子どもの法律行為や財産管理に関してはその都度親権者の同意が必要になります。別れた元夫婦にとってその煩雑さは否めません。

  • 再婚後の養子縁組への障害

たとえば監護権のみを得て子どもと暮らす母親がその後再婚した場合、再婚相手と子どもが養子縁組をすることが考えられます。このとき、子どもが15歳未満であれば法定代理人の承諾が必要となりますが、法定代理人とは親権者(元夫)のことです。元妻と子どもの新しい門出を祝える相手なら問題ありませんが、そうでなければ養子縁組は困難となるでしょう。
 

共同親権

離婚後いずれか一方のみに親権を認める現行の単独親権への不満から、近年、父母双方が対等に子育てに関われる共同親権を求める動きが大きくなっています。これを受けて、法務省は2019年に共同親権導入の是非に関する研究会を発足させました。
単独親権は国際的にみても少数であり、親が子どもの養育に関わる権利だけではなく、子どもの両親へ対等に接して愛情を受ける権利も侵害するというのが理由です。
 

共同親権の問題点
  • 共同「監護」が困難

監護権は子どもの身体上の監督保護を内容にするため、原則として監護親と一緒に生活します。しかし、離婚した夫婦は通常は一緒には暮らしません。一つしかない子どもの身体を離婚した夫婦が共同で監護するのは物理的に不可能です。そこで、子どもが双方を行き来するという方法も考えられますが、子どもに二重生活を強いかねず、心身の安定が害される恐れがあります。

  • 合意形成が困難

子どもの教育や就職、財産管理、対外的な活動等、様々な場面で父母が話し合う必要があります。離婚後良好な関係であれば問題ありませんが、感情的な対立から意見がまとまらない、さらには話すことすら困難な場合もあります。このとき最も不利益を受けるのは子ども、という本末転倒を招きかねません。
 

最後に

離婚後共同親権を導入した欧米諸国では、子供といえども独立した人格であって親の付属物ではない、その養育については片親の恣意ではなく、父母が共同責任のもと決定すべきだという考えが根底にあります。これに対して、我が国における共同親権への要望は、親権及び監護権をとれなかった父親が子どもに会いたくて、という背景があるようです。
共同親権に向けた動きは注視する必要がありますが、面会交流の実現や養育費の支払い等、子どもを思うのであれば現行制度下でもできることはあります。子ども目線の養育に向けた取り組みを弁護士がサポートします。