離婚調停を申し立てたものの、相手が期日に現れないという事態が生じることがあります。裁判所から呼出状が届いているにもかかわらず、連絡もなく欠席するという状況です。
調停は話し合いの手続きであるため、相手が出頭しなければ協議は進みません。それでは離婚できないのかというと、そうではなく、次の段階に進む道が用意されています。
この記事では、相手が欠席した場合に何が起きるか、裁判所がどのような対応をとるか、不成立となった後の進め方について整理します。
① 調停への出頭は義務とされている
家事事件手続法は、調停の当事者に対し、期日への出頭を求めています。正当な理由なく出頭しない場合には、5万円以下の過料に処すると定められています。 もっとも、実際に過料が科されることはほとんどありません。制度としては存在するものの、運用上は適用されない取り扱いとなっています。 そのため、出頭しないことに対して直接的な制裁が加えられることは、現実には期待しにくいといえます。
② 相手が欠席する理由
欠席の背景には、いくつかの事情が考えられます。理由によって、その後の対応も変わってきます。
| 理由 | 考えられる対応 |
|---|---|
| 離婚に応じる意思がまったくない | 調停での解決は難しく、訴訟を視野に入れる |
| 仕事の都合で日程が合わない | 期日の変更を申し出てもらうよう働きかける |
| 手続きの内容がわからず不安がある | 裁判所から説明が行われることで出頭に至る場合もある |
| 呼出状が届いていない | 住所の確認が必要。転居している可能性がある |
| 顔を合わせたくない | 当事者が同席しない仕組みであることが伝われば応じる場合もある |
相手が手続きそのものを誤解していることもあります。調停は当事者が顔を合わせずに進むものであること、離婚を強制される場ではないことが伝わることで、出頭に応じる場合があります。
③ 第1回期日までの流れ
相手が出頭するかどうかは、申立てから第1回期日までの経過によっても変わります。
呼出状が届くまで
申立てを行うと、おおむね1か月から1か月半後に第1回の期日が指定されます。その2週間から3週間ほど前に、相手方の住所へ呼出状が送付されます。 呼出状には、期日の日時、出頭する裁判所、申立ての趣旨が記載されています。あわせて、答弁書にあたる書面の提出を求められることもあります。
相手が受け取らない場合
呼出状は特別送達という方法で送付されます。受け取りがなされない場合、裁判所は付郵便送達という方法をとることがあります。これは、発送した時点で送達がなされたものとみなす取り扱いです。 この方法がとられると、相手が実際に受け取っていなくても、手続き上は送達済みとして進行します。
事前に連絡を取れる場合
相手と連絡が取れる状況であれば、調停を申し立てたこと、どのような手続きであるかを伝えておくことで、出頭につながる場合があります。 裁判所からの呼出状だけを受け取ると、身構えてしまう方もいらっしゃいます。話し合いの場であることが伝わることで、対応が変わることもあります。
④ 裁判所が行う働きかけ
再度の呼出し
第1回の期日に欠席があった場合、裁判所は次回の期日を指定し、あらためて呼出状を送付します。通常、2回から3回程度は期日を重ねて出頭を促します。
電話や書面による連絡
呼出状に対して反応がない場合、裁判所書記官が電話で連絡をとることがあります。出頭できない事情があるのか、手続きに参加する意思があるのかを確認するものです。 また、出頭を促す書面が別途送付されることもあります。
それでも出頭しない場合
複数回にわたり働きかけを行っても出頭がない場合、話し合いによる解決は見込めないと判断され、調停は不成立として終了します。 申立てから不成立までの期間は、事案によりますが3か月から半年程度となることが多くあります。
⑤ 調停が不成立となった後
不成立となった場合、次に取りうる選択肢は複数あります。
離婚訴訟を提起する
離婚を求める意思が固まっている場合には、家庭裁判所に訴訟を提起することになります。調停を経ているため、訴訟提起の要件は満たしています。 調停が不成立となった際には、裁判所から不成立調書の謄本を取得できます。訴訟を提起する際の添付書類となりますので、受け取っておくことになります。 訴訟では、法定離婚原因があるかどうかが判断されます。相手が出頭しない場合であっても、こちらが主張と立証を行い、裁判所が判断を下すことになります。
時期を置いて再度申し立てる
直ちに訴訟に進まず、しばらく期間を置いてから再度調停を申し立てるという選択もあります。別居期間が延びることで、破綻の評価が変わる場合もあるためです。 ただし、時間の経過は生活の不安定さにもつながります。婚姻費用が支払われていない状況であれば、その点への対応も必要となります。
婚姻費用の調停を別途申し立てる
離婚調停が不成立となっても、婚姻費用の分担を求める調停は別に申し立てることができます。別居中の生活費が支払われていない場合には、こちらを優先することも考えられます。 婚姻費用については、調停が不成立となっても審判に移行し、裁判所が金額を定めます。相手が出頭しない場合でも、提出された資料に基づいて判断されるため、手続きは進みます。 審判で定められた金額が支払われない場合には、給与の差押えといった手続きをとることもできます。相手が話し合いに応じない状況であっても、生活費の確保については道が開ける場合があります。
⑥ 審判離婚という方法
調停が成立しない場合に、家庭裁判所が職権で離婚を定める審判離婚という制度があります。
どのような場合に用いられるか
家事事件手続法284条は、調停が成立しない場合において、裁判所が相当と認めるときは、必要な審判をすることができると定めています。 わずかな意見の相違で合意に至らなかった場合や、当事者の一方が出頭しないものの離婚自体には争いがない場合などに、この制度が用いられることがあります。
異議を述べられると効力を失う
審判がなされた場合、当事者は告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てることができます。異議が出されると、審判は効力を失います。 そのため、相手が離婚に強く反対している事案では、審判がなされても異議によって覆される可能性が高く、実際の利用は限られています。 相手が手続きに一切関与せず、異議を述べることも見込まれないという場合には、審判による解決が図られることもあります。
⑦ 訴訟における相手の欠席
訴訟を提起した後、相手が出頭しないという事態も生じえます。この場合の扱いは、調停とは異なります。
答弁書も出さず欠席した場合
通常の民事訴訟では、相手が争わなければ原告の主張を認めたものとして扱われます。しかし、離婚訴訟にはこの取り扱いが適用されません。 身分関係に関わる訴訟であるため、当事者が争わない場合でも、裁判所が自ら事実を調べたうえで判断します。したがって、こちらが法定離婚原因の存在を立証する必要があります。
立証が求められる
相手が何も反論しないからといって、主張がそのまま認められるわけではありません。破綻の経緯を示す資料、別居の事実、これまでの経過などを提出し、裁判所の判断を求めることになります。 この点で、調停の段階から記録を整えておくことが役立ちます。
⑧ 相手の所在がわからない場合
呼出状が届かず、相手の居場所自体が不明であるという場合もあります。
住所の調査
戸籍の附票を取得することで、住民票上の住所を辿ることができます。ご自身で取得することが難しい場合には、弁護士が職務上の請求により調査できることもあります。 ただし、住民票を移さずに転居している場合には、この方法では把握できません。
公示送達による訴訟
調査を尽くしても所在が判明しない場合、公示送達という方法があります。裁判所の掲示場に呼出しを掲示することで、送達がなされたものとして扱う制度です。 この方法により、相手が出頭しないまま訴訟を進めることができます。もっとも、所在不明であることを調査によって明らかにする必要があり、住所地への訪問調査などが求められます。
3年以上の生死不明
生存しているかどうかも確認できない状態が3年以上続いている場合には、法定離婚原因のひとつに該当します。この場合、その事実を立証することで離婚が認められることになります。
⑨ 欠席を前提に準備しておくこと
相手が調停に応じない可能性が高いと見込まれる場合、訴訟を視野に入れた準備を並行して進めておくことが考えられます。
- 婚姻関係が破綻していることを示す資料の整理
- 別居の開始時期と、それ以降の経過の記録
- 相手の収入や財産に関する情報の把握
- 子どもの養育状況に関する記録
調停の段階でこれらを整理しておくことで、訴訟に移行した際の負担が軽くなります。 また、調停の中で相手が一度でも出頭し、何らかの主張をしていれば、その内容が記録に残ります。訴訟において相手の立場を把握する材料となります。
調停委員に経過を伝えておく
相手が欠席している場合でも、調停期日にはこちらが出頭し、調停委員に事情を説明することになります。 これまでの経緯、相手が応じない理由として思い当たること、こちらが望む解決の形を整理して伝えておくことで、裁判所の対応につながる場合があります。 また、相手に伝えてほしい事項がある場合には、調停委員を通じて伝達してもらうこともできます。直接の連絡が難しい関係であっても、裁判所を介することで意思が届く場合があります。
⑩ よくあるご質問
Q. 相手が欠席すれば、離婚が認められやすくなりますか。
A. 欠席したことのみをもって離婚が認められるわけではありません。訴訟においても、法定離婚原因があることを立証する必要があります。ただし、話し合いに一切応じない姿勢が、婚姻関係の破綻を示す事情のひとつとして評価される場合はあります。
Q. 調停は何回欠席されたら不成立になりますか。
A. 明確な回数の定めはありません。裁判所が働きかけを行ったうえで、出頭の見込みがないと判断した段階で不成立となります。実務上は2回から3回程度の期日を経ることが多いといえます。
Q. 相手が代理人だけを出席させることはできますか。
A. 弁護士が代理人として出席することは可能です。ただし、調停は本人の意思を確認する場でもあるため、裁判所から本人の出頭を求められることが一般的です。代理人のみの出席が続く場合、事情によっては話し合いが進まないと判断されることもあります。
Q. 申し立てた調停を取り下げることはできますか。
A. 申立人はいつでも取り下げることができます。相手の同意も必要ありません。ただし、取り下げた場合、訴訟を提起するにはあらためて調停を経る必要が生じます。次の手続きを見据えたうえで判断されることをお勧めします。
まとめ
相手が調停に出頭しない場合について、本記事で整理した内容を振り返ります。
- 調停への出頭は義務とされ過料の定めもあるが、実際に科されることはほとんどない
- 裁判所は再度の呼出しや電話連絡により出頭を促す
- 働きかけを行っても出頭がない場合、話し合いによる解決は見込めないとして不成立となる
- 不成立後は、訴訟の提起、時期を置いての再申立て、婚姻費用の調停といった選択肢がある
- 離婚訴訟では、相手が争わない場合でも法定離婚原因の立証が求められる
- 相手の所在が不明な場合には、公示送達により手続きを進める方法がある
- 欠席が見込まれる場合、訴訟を視野に入れた資料の整理を並行して進めておくと役立つ
「調停を申し立てたが相手が来ない」「この先どう進めればよいかわからない」といったご相談を承っております。これまでの経過を伺いながら、次の段階に向けた進め方をご一緒に検討いたします。





