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離婚後の健康保険と年金——必要な手続きと期限を整理して解説

2026-09-30
離婚

離婚が成立した後、財産分与や養育費といった取り決めとは別に、生活に関わる各種の手続きが必要となります。その中でも早めの対応が求められるのが、健康保険と年金です。
配偶者の扶養に入っていた方の場合、離婚によってその資格を失います。手続きをしないまま保険証を使い続けると、後から医療費の返還を求められることもあります。
この記事では、離婚後の健康保険の選択肢、年金の種別変更、お子さまの扶養の取り扱い、手続きの期限について整理します。
 

① 離婚によって何が変わるか

婚姻中に配偶者の勤務先の健康保険に被扶養者として加入していた場合、離婚によってその資格を失います。 年金についても同様に、第3号被保険者として保険料の負担がなかった方は、離婚により第1号または第2号被保険者へと変わります。  

区分婚姻中離婚後
健康保険配偶者の健康保険の被扶養者国民健康保険または勤務先の健康保険
年金第3号被保険者(保険料の負担なし)第1号または第2号被保険者
保険料負担なし自己負担が生じる

  ご自身が勤務先の健康保険に加入していた場合には、離婚によって資格が変わることはありません。氏名や住所の変更手続きのみとなります。  

② 健康保険の選択肢

扶養から外れる場合、次のいずれかに加入することになります。  

勤務先の健康保険に加入する

就労しており、勤務時間などの条件を満たす場合には、勤務先の健康保険に加入します。手続きは勤務先が行いますので、離婚の事実と資格喪失証明書を提出することになります。 保険料は労使で折半されるため、国民健康保険と比べて負担が軽くなることが多くあります。傷病手当金や出産手当金といった給付が受けられる点も、国民健康保険との違いです。  

国民健康保険に加入する

就労していない場合や、勤務先の健康保険の加入条件を満たさない場合には、お住まいの市区町村で国民健康保険に加入します。 保険料は前年の所得をもとに算定されます。婚姻中に収入がなかった場合、保険料は低く抑えられますが、前年に一定の収入があった場合には相応の負担となります。  

元配偶者の健康保険を任意継続する方法はない

被扶養者として加入していた場合、任意継続の制度を利用することはできません。任意継続は、本人として加入していた方が退職後も継続する制度であるためです。 この点を誤解されている方もいらっしゃいますので、扶養に入っていた場合には、上記いずれかの方法を選ぶことになります。  

③ 手続きの流れと期限

資格喪失証明書を取得する

国民健康保険に加入するには、元配偶者の健康保険の資格を失ったことを証明する書類が必要です。これは元配偶者の勤務先を通じて発行されます。 元配偶者に依頼する必要があるため、関係によっては取得に時間を要することがあります。離婚の協議を進める段階で、この書類について取り決めておくことも考えられます。 どうしても取得できない場合には、市区町村の窓口に事情を説明することで、別の方法での確認に応じてもらえることもあります。  

14日以内という期限

国民健康保険への加入手続きは、資格を失った日から14日以内に行うこととされています。   この期限を過ぎても加入自体はできますが、資格を失った日までさかのぼって保険料が発生します。 また、手続きが完了するまでの間に医療機関にかかった場合、いったん全額を負担することになります。 後から払い戻しを受けられますが、窓口での一時的な負担は生じます。  

保険証を返却する

扶養から外れた後は、それまでの保険証を使用することができません。元配偶者の勤務先へ返却することになります。 誤って使用してしまった場合、保険者から医療費の返還を求められます。離婚が成立したら、速やかに手元から離しておくことが望まれます。  

④ 年金の手続き

第3号被保険者であった方は、離婚により種別の変更が必要となります。  

第1号被保険者になる場合

就労していない、または勤務先の厚生年金に加入しない場合には、第1号被保険者となります。お住まいの市区町村の窓口で、種別変更の届出を行います。 国民年金の保険料は定額で、月額1万7千円程度です。収入がない場合には、免除や納付猶予の制度を利用できることがあります。  

免除・猶予の制度

  • 全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の区分がある
  • 前年の所得に応じて判定される
  • 免除を受けた期間も受給資格期間に算入される
  • 将来受け取る年金額は、納付した場合より少なくなる

  離婚により収入が大きく変わった場合、前年の所得ではなく、離婚後の状況を踏まえて判定してもらえる特例が設けられていることがあります。窓口で相談されるとよいでしょう。  

第2号被保険者になる場合

就労して勤務先の厚生年金に加入する場合には、勤務先が手続きを行います。ご自身での届出は不要です。  

⑤ 別居中の取り扱い

離婚が成立する前の別居期間中は、扶養の関係がどうなるのかという問題が生じます。  

別居しても扶養は続くのが原則

健康保険の被扶養者であるかどうかは、生計を維持されているかどうかで判断されます。別居していても、生活費を受け取っているのであれば、引き続き被扶養者として扱われるのが原則です。 婚姻費用が支払われている状況であれば、扶養の関係は維持されます。保険証もそのまま使用できます。  

相手が扶養から外そうとする場合

別居を機に、相手が勤務先へ扶養から外す届出を行うことがあります。この場合、健康保険の資格を失うことになります。 生活費が支払われていない状況であれば、扶養の要件を欠くとして手続きが認められることもあります。一方、婚姻費用が支払われているにもかかわらず一方的に外された場合には、保険者に事情を説明することで見直される余地があります。 いずれにしても、保険証が使えない状態が続くことは避けたいところです。資格を失った場合には、速やかに国民健康保険への加入を検討することになります。  

⑥ 子どもの健康保険

お子さまをどちらの被扶養者とするかは、親権者が誰かとは別に決まります。  

生計を維持している側の扶養に入る

健康保険上は、実際に生計を維持している側の被扶養者となるのが原則です。お子さまを養育している側が加入している保険に入れることになります。 もっとも、養育費が支払われている場合など、元配偶者が生計を維持していると評価される場合には、引き続き元配偶者の扶養にとどまることもあります。  

元配偶者の扶養のままとする場合

お子さまが元配偶者の健康保険に入ったままであれば、新たな手続きは不要です。保険証もそのまま使用できます。 ただし、保険証の氏名が変わる場合や、元配偶者が転職した場合には、その都度手続きが生じます。また、元配偶者との連絡が必要となる場面が続くことになります。  

自分の扶養に移す場合

お子さまをご自身の健康保険に移す場合、勤務先の健康保険であれば勤務先を通じて手続きを行います。国民健康保険であれば、市区町村の窓口で加入の手続きをします。 いずれの場合も、元配偶者の健康保険の資格を失ったことを示す書類が必要となります。  

⑦ 就労状況によって変わる点

離婚後の働き方によって、保険や年金の扱いが変わります。就職や転職を検討されている場合には、この点もあわせて考えておくことが役立ちます。  

勤務先の健康保険に入る条件

パートやアルバイトであっても、勤務時間や勤務日数が一定の条件を満たせば、勤務先の健康保険に加入することになります。  

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 月額賃金が8万8千円以上であること
  • 2か月を超えて雇用される見込みがあること
  • 学生でないこと

  これらを満たす場合には、勤務先の健康保険と厚生年金に加入します。保険料の負担は生じますが、将来受け取る年金額が増える点、傷病手当金などの給付を受けられる点が利点となります。  

収入を抑えるという考え方

保険料の負担を避けるため、意図的に収入を抑えるという選択をされる方もいらっしゃいます。 ただし、厚生年金に加入すれば将来の受給額が増えます。また、体調を崩して働けなくなった際の傷病手当金も、国民健康保険にはない給付です。目先の負担だけでなく、長い目で見た判断が求められる場面といえます。  

⑧ あわせて確認したい手続き

健康保険と年金のほかにも、離婚後に必要となる手続きがあります。  

手続き窓口と期限の目安
住民票の異動転居する場合。転入から14日以内
マイナンバーカードの変更氏名や住所が変わる場合
児童手当の受給者変更市区町村。監護する側が受給する
児童扶養手当の申請市区町村。ひとり親世帯を対象とする給付
ひとり親家庭医療費助成市区町村。自治体ごとに制度が異なる
年金分割の請求年金事務所。離婚から2年以内

  児童扶養手当やひとり親家庭を対象とする助成制度は、申請しなければ受けられません。市区町村の窓口で、利用できる制度をまとめて確認されるとよいでしょう。 なお、年金分割については請求期限が離婚から2年と定められています。他の手続きとあわせて、早めに済ませておくことが望まれます。  

手続きの順番

多くの手続きは、離婚届の提出後に進めることになります。役所での手続きをまとめて行う場合、次のような順序が考えられます。  

  • 転居する場合は住民票の異動を行う
  • 国民健康保険への加入と、国民年金の種別変更を行う
  • マイナンバーカードの記載事項を変更する
  • 児童手当の受給者変更を申請する
  • 児童扶養手当など、利用できる制度について相談する

  市区町村によっては、離婚に伴う手続きをまとめて案内する窓口を設けているところもあります。来庁の際に確認されるとよいでしょう。  

⑨ よくあるご質問

Q. 元夫が資格喪失証明書を出してくれません。

A. 元配偶者の協力が得られない場合、市区町村の窓口にその旨を伝えることで、別の書類による確認に応じてもらえることがあります。また、元配偶者の勤務先へ直接連絡し、発行を依頼できる場合もあります。まずは窓口で事情を説明されるとよいでしょう。  

Q. 離婚前に手続きを進めておくことはできますか。

A. 健康保険や年金の手続きは、離婚が成立した後に行うものです。事前に済ませることはできません。ただし、必要な書類や加入先について調べておくことで、離婚後の対応がスムーズになります。  

Q. 保険料の負担が大きく、支払いが難しい状況です。

A. 国民健康保険には、災害や失業など特別な事情がある場合の減免制度が設けられていることがあります。また、国民年金については免除や納付猶予の制度があります。いずれも申請が必要ですので、市区町村の窓口でご相談ください。  

Q. 子どもの保険証が元夫の会社のままです。問題ありますか。

A. 生計を維持している側の扶養に入るのが原則ですが、元配偶者の扶養にとどまること自体が直ちに問題となるわけではありません。ただし、扶養控除をどちらが受けるかという税務上の取り扱いとは別の問題ですので、あわせて整理しておかれるとよいでしょう。  

まとめ

離婚後の健康保険と年金の手続きについて、本記事で整理した内容を振り返ります。  

  • 配偶者の扶養に入っていた場合、離婚により資格を失う
  • 健康保険は、勤務先の健康保険に加入するか国民健康保険に加入するかを選ぶ
  • 被扶養者であった方が任意継続の制度を利用することはできない
  • 国民健康保険への加入は、資格を失った日から14日以内に行う
  • 国民健康保険の加入には、元配偶者を通じて取得する資格喪失証明書が必要
  • 第3号被保険者であった方は、年金の種別変更の届出を行う
  • お子さまの扶養は、生計を維持している側に入るのが原則

  「元配偶者から必要な書類を受け取れない」「離婚の条件を決める段階で整理しておきたい」といったご相談を承っております。離婚後の生活を見据えた取り決めについて、ご一緒に検討いたします。

著者

後藤千絵先生
弁護士

後藤ごとう 千絵ちえ

京都府生まれ。滋賀県立膳所高校、大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に総合職として入社。

30歳を過ぎてから法律の道を志し、2006年に旧司法試験に合格。

08年に弁護士登録し、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所を設立。

離婚や相続など、家族の事案を最も得意とし、近年は「モラハラ」対策にも力を入れている。

著作に「誰も教えてくれなかった離婚しないための結婚の基本」(KADOKAWA)、『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』(三笠書房)がある。

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