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離婚したいが相手が応じない——法定離婚原因と進め方を解説

2026-09-30
離婚

離婚の意思を伝えたものの、相手が話し合いに応じてくれないというご相談は少なくありません。協議離婚は双方の合意がなければ成立しないため、一方が拒み続けている限り離婚届を出すことはできません。
もっとも、相手の同意が得られない場合であっても、最終的には裁判によって離婚が認められる道があります。ただし、そのためには法律の定める事由に該当することが必要です。
この記事では、裁判で離婚が認められる五つの事由、性格の不一致がどう扱われるか、手続きの進め方、別居期間の意味について整理します。
 

① 離婚が成立する四つの方法

離婚には、協議・調停・審判・裁判という四つの方法があります。相手が応じない場合、どの段階まで進むことになるのかを把握しておくことが、見通しを立てるうえで役立ちます。  

方法相手の同意
協議離婚必要。合意して離婚届を提出する
調停離婚必要。家庭裁判所で話し合い、合意に至れば成立
審判離婚不要だが、異議を述べられると効力を失う。利用は限られる
裁判離婚不要。法定離婚原因があれば判決で離婚が認められる

  相手が最後まで拒む場合、裁判によって解決を図ることになります。ただし、いきなり訴訟を提起することはできず、まず調停を経る必要があります。これを調停前置主義といいます。  

② 裁判で離婚が認められる五つの事由

民法770条1項は、裁判上の離婚を請求できる事由として五つを定めています。  

事由内容
不貞行為配偶者以外の者と性的関係を持つこと
悪意の遺棄正当な理由なく同居・協力・扶助の義務を果たさないこと
3年以上の生死不明生存も死亡も確認できない状態が3年以上続くこと
回復の見込みがない強度の精神病婚姻の義務を果たせない程度の精神疾患があること
婚姻を継続し難い重大な事由上記以外で、婚姻関係が破綻していると認められること

  実務で最も多く用いられるのが、五つ目の「婚姻を継続し難い重大な事由」です。他の四つに該当しない事情は、すべてこの類型で判断されることになります。  

③ 不貞行為・悪意の遺棄について

不貞行為

配偶者以外の者と性的関係を持つことを指します。食事やメッセージのやり取りにとどまる場合は、この類型には該当しません。 もっとも、性的関係までは認められなくても、その親密さの程度によっては、婚姻を継続し難い重大な事由として評価されることがあります。 不貞行為を理由とする場合、それを示す資料が必要となります。相手が事実を認めていれば問題となりませんが、否定している場合には立証が求められます。  

悪意の遺棄

夫婦には同居し、協力し、扶助する義務があります。正当な理由なくこれを果たさない場合が、悪意の遺棄にあたります。  

  • 生活費を渡さないまま家を出た
  • 同居を拒み、連絡にも応じない
  • 働けるにもかかわらず働かず、家計に協力しない
  • 相手を家から追い出した

  単身赴任や、暴力から逃れるための別居は、正当な理由があるものとして遺棄には該当しません。  

④ 性格の不一致はどう扱われるか

離婚を考える理由として最も多く挙げられるのが、性格の不一致です。しかし、この言葉だけでは法定離婚原因として認められません。  

破綻しているかどうかが問われる

裁判所が判断するのは、性格が合わないという事実そのものではなく、その結果として婚姻関係が修復の見込みのない状態に至っているかどうかです。 そのため、具体的にどのような経緯で関係が悪化し、現在どのような状態にあるのかを示す必要があります。漠然と合わないという説明では足りません。  

考慮される事情

  • 会話がなくなった時期と、その後の期間
  • 家庭内での生活実態(食事、寝室、家事の分担など)
  • 別居しているかどうかと、その期間
  • 夫婦関係の修復を試みた経過
  • 相手の言動によって生じた心身の不調

  これらを積み重ねることで、関係が形だけのものになっていることを示していくことになります。  

⑤ 別居期間が持つ意味

婚姻関係が破綻しているかどうかを判断するうえで、別居の有無と期間は重要な要素となります。  

どの程度の期間が必要か

何年別居すれば離婚が認められるという明確な基準はありません。裁判例では、3年から5年程度を一つの目安とする見方が示されることがありますが、他の事情との総合判断となります。 不貞行為やDVといった事情がある場合には、別居期間が短くても破綻が認められることがあります。逆に、これといった事情がなく、相手が関係の修復を望んでいる場合には、より長い期間が必要となる傾向があります。  

別居に至る経緯も考慮される

一方的に家を出た場合、その経緯によっては悪意の遺棄と評価されるおそれがあります。特に、生活費を渡さないまま別居を始めた場合には注意が必要です。 別居を始める際には、婚姻費用の取り決めをあわせて進めておくことが望まれます。  

⑥ 自分に原因がある場合

不貞行為など、婚姻関係が破綻した原因を作った側を有責配偶者といいます。有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められません。  

例外的に認められる場合

もっとも、一定の条件を満たす場合には、有責配偶者からの請求であっても認められることがあります。裁判例では、次の三点が考慮されています。  

  • 別居期間が両当事者の年齢や同居期間と比べて相当の長期間に及んでいること
  • 未成熟の子がいないこと
  • 相手が離婚により精神的・社会的・経済的に過酷な状況に置かれないこと

  この三点がそろっていれば必ず認められるというものではなく、個別の事情を踏まえた判断となります。相手の生活への配慮として、財産分与や養育費の面で手厚い内容を提示することが、判断に影響する場合もあります。  

⑦ 手続きの進め方

調停の申立て

相手が話し合いに応じない場合、家庭裁判所に夫婦関係調整調停を申し立てます。調停委員が間に入ることで、当事者同士では進まなかった話し合いが動くこともあります。 申立ては、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。費用は収入印紙1,200円と連絡用の郵便切手のみで、期日は1か月から2か月に1回程度のペースで開かれます。 相手が離婚そのものを拒んでいる場合でも、調停の場で条件面の協議が進み、最終的に合意に至ることは珍しくありません。第三者が入ることで、これまで伝わらなかった事情が相手に届く場合もあります。  

調停が成立しない場合

合意に至らなかった場合、調停は不成立として終了します。その後、離婚を求める側が家庭裁判所に訴訟を提起することになります。 調停が不成立になったからといって、直ちに訴訟を起こさなければならないわけではありません。時期を見て再度協議することも、しばらく間を置くことも選択肢となります。  

訴訟に要する期間

訴訟を提起してから判決に至るまでは、1年程度を要することが一般的です。争点が多い場合には、さらに長くなることもあります。 調停に要した期間を含めると、解決までに2年近くかかることもあります。この間の生活をどう支えるかという観点から、婚姻費用の取り決めが重要となります。 なお、訴訟の途中で和解が成立することも多くあります。裁判所から和解の打診がなされ、条件を調整したうえで解決に至るという経過をたどることも少なくありません。判決まで争うことだけが解決の形ではありません。  

⑧ 訴訟に向けて準備しておくこと

将来的に訴訟による解決を視野に入れる場合、その前の段階から準備を進めておくことが役立ちます。  

記録を残す

婚姻関係が破綻していることを示すには、具体的な事実の積み重ねが必要となります。日々の出来事を記録しておくことで、後に経過を説明する際の資料となります。  

  • 会話がない状態がいつから続いているか
  • 生活費が渡されているか、金額はいくらか
  • 相手の言動で心身に影響が出た出来事
  • 関係の修復を求めたが応じてもらえなかった経過

  日付とともに簡潔に記しておく程度で足ります。後からまとめて書き起こすよりも、その都度残しておくほうが信頼性が高まります。  

診断書を取得しておく

相手の言動により心身の不調が生じ、医療機関を受診されている場合には、その記録が資料となります。受診の際、症状の背景について医師に伝えておくことで、診断書の記載に反映されることがあります。  

財産の状況を把握しておく

離婚が成立する段階では、財産分与の協議も必要となります。相手名義の預貯金や不動産について、把握できる範囲で確認しておくことが、後の交渉に役立ちます。  

⑨ 相手が応じない理由を考える

離婚に応じない背景には、さまざまな事情があります。理由によって、取りうる対応が変わってきます。  

経済的な不安がある場合

離婚後の生活が成り立たないという不安から拒んでいる場合には、財産分与や養育費の内容を具体的に示すことで、態度が変わることがあります。 漠然と離婚を求めるのではなく、離婚後の生活がどうなるのかを示したうえで協議することが、解決につながる場合があります。  

子どもへの影響を懸念している場合

子どものために婚姻を続けるべきだという考えから拒んでいる場合には、面会交流をどう確保するか、養育環境をどう整えるかを示すことが検討されます。  

感情的な理由による場合

納得がいかない、謝罪がないといった感情が背景にある場合には、時間をかけた対応が必要となります。調停の場で第三者を交えて話すことで、整理が進むこともあります。 この場合、条件面で譲歩しても解決に至らないことがあります。相手が何に納得していないのかを把握することが、進め方を考える出発点となります。  

離婚後の住まいの問題

持ち家に住み続けたい、出て行く先がないといった住居の問題が、離婚に応じない理由となっていることもあります。 この場合、財産分与の中で住まいをどう扱うか、一定期間の居住を認めるかといった調整によって、話し合いが進む場合があります。  

⑩ よくあるご質問

Q. 相手が離婚届に署名してくれません。勝手に出すことはできますか。

A. 相手の署名を偽造して提出することは、私文書偽造などにあたる行為です。また、後に離婚無効の訴えを起こされる可能性もあります。正規の手続きによって進めることになります。  

Q. 離婚届不受理申出をされていると聞きました。

A. 勝手に離婚届を提出されることを防ぐため、あらかじめ役所に申し出ておく制度です。申出がなされている場合、たとえ双方が署名した届出であっても受理されません。相手が申出を取り下げるか、調停や裁判による解決が必要となります。  

Q. 別居して2年です。裁判で離婚は認められますか。

A. 別居期間だけで判断されるものではなく、破綻に至った経緯や現在の状況を含めた総合判断となります。不貞行為やDVといった事情がある場合には、2年でも認められることがあります。ご事情を伺ったうえで、見通しをお伝えできます。  

Q. 調停を申し立てると、相手を刺激してしまわないか心配です。

A. 調停は裁判所を通じた話し合いの手続きであり、相手を責める場ではありません。第三者が間に入ることで、かえって冷静なやり取りができるようになることもあります。当事者が顔を合わせずに進められる点も、負担の軽減につながります。  

まとめ

相手が離婚に応じない場合について、本記事で整理した内容を振り返ります。  

  • 協議離婚は双方の合意が必要だが、最終的には裁判によって離婚が認められる道がある
  • 裁判で離婚が認められるには、民法の定める五つの事由に該当することが必要
  • 性格の不一致そのものではなく、その結果として関係が破綻しているかどうかが問われる
  • 別居期間は重要な要素だが、明確な年数の基準はなく総合判断となる
  • 有責配偶者からの請求は原則認められないが、例外が認められる場合もある
  • 訴訟を提起するには、まず調停を経る必要がある
  • 相手が応じない理由に応じて、示すべき条件や対応が変わる

  「離婚を切り出したが取り合ってもらえない」「自分の場合に裁判で認められるのか知りたい」といったご相談を承っております。これまでの経過を伺いながら、進め方をご一緒に検討いたします。

著者

後藤千絵先生
弁護士

後藤ごとう 千絵ちえ

京都府生まれ。滋賀県立膳所高校、大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に総合職として入社。

30歳を過ぎてから法律の道を志し、2006年に旧司法試験に合格。

08年に弁護士登録し、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所を設立。

離婚や相続など、家族の事案を最も得意とし、近年は「モラハラ」対策にも力を入れている。

著作に「誰も教えてくれなかった離婚しないための結婚の基本」(KADOKAWA)、『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』(三笠書房)がある。

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