取扱業務

Services

弁護士費用

Legal-Fee

弁護士紹介

Profile

アクセス

Access

お問合せ

Contact

0798-81-5965
受付時間:07:00 - 24:00

Contact
Menu

別居を始める前に決めておくこと——生活費・住まい・子どもの環境

2026-09-30
離婚

離婚を考えるなかで、まず別居から始めるという方は少なくありません。同じ家で暮らし続けることが難しく、距離を置いて考えたいという状況です。
別居そのものに手続きは必要ありませんが、準備をしないまま家を出てしまうと、生活費の確保や必要書類の入手に苦労することがあります。後の話し合いにも影響します。
この記事では、別居を始める前に整理しておきたい事項、持ち出しておくとよい書類、住民票や郵便物の扱いについて整理します。
 

① 別居の前に考えておきたいこと

別居は、離婚に向けた一つの段階であると同時に、当面の生活をどう組み立てるかという問題でもあります。  

検討事項考えておきたい内容
住まい実家に戻るか、賃貸を借りるか。費用の目安
生活費当面の資金と、婚姻費用をどう請求するか
子どもの環境転校の要否、学校への連絡、生活リズム
仕事就労を始めるか、勤務時間を変えるか
相手への伝え方事前に伝えるか、後から連絡するか

  すべてを整えてから別居するのが理想的ですが、状況によっては急を要することもあります。安全に関わる事情がある場合には、準備より避難を優先することになります。  

② 持ち出しておきたい書類

別居後は、家にある書類を取りに戻ることが難しくなります。必要なものをあらかじめ確保しておくことが、後の手続きを進めるうえで役立ちます。  

ご自身に関するもの

  • 健康保険証、年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 預貯金の通帳、キャッシュカード、届出印
  • 運転免許証、パスポート、マイナンバーカード
  • 印鑑登録証、実印
  • 給与明細、源泉徴収票

お子さまに関するもの

  • 健康保険証、母子健康手帳
  • 通帳、お薬手帳
  • 学用品、教科書

相手の財産に関するもの

財産分与の協議では、相手名義の財産も対象となります。別居前に把握しておくことで、後の話し合いを進めやすくなります。  

  • 預貯金通帳の写し、取引明細
  • 保険証券の写し
  • 給与明細、源泉徴収票、確定申告書の写し
  • 不動産の登記事項証明書、購入時の契約書
  • 退職金規程がわかる資料

  原本を持ち出すのではなく、写真を撮っておく、コピーを取っておくという方法が考えられます。原本を持ち出すと、後に返還を求められて争いになることがあります。  

③ 生活費をどう確保するか

別居中も、収入の多い側が少ない側に生活費を支払う義務があります。これを婚姻費用といいます。  

請求した時点からが対象となる

婚姻費用は、請求した時点以降の分について認められるのが一般的です。別居を始めてからしばらく経って請求しても、それ以前の分をさかのぼって受け取ることは難しくなります。   別居を開始したら、速やかに婚姻費用を請求する意思を示しておくことが大切です。 話し合いで決まらない場合でも、家庭裁判所に婚姻費用分担調停を申し立てておけば、申立ての時点が基準となります。 相手と連絡が取れない状況であっても、調停の申立ては可能です。  

当面の資金を用意しておく

婚姻費用が実際に支払われるまでには、協議や調停に時間を要します。調停を申し立てた場合、金額が定まるまでに数か月かかることもあります。 その間の生活を支える資金として、数か月分の生活費を用意しておくことが望まれます。  

共有の口座からの引き出し

夫婦の生活費を管理していた口座から、別居時にまとまった額を引き出すことがあります。 当面の生活費として相当な範囲であれば、通常は問題となりません。ただし、残高の大半を持ち出した場合には、後の財産分与の協議で調整されることになります。 引き出した金額と使途を記録しておくことで、後に説明を求められた際に対応できます。  

④ 記録を残しておく

別居に至った経緯は、後の話し合いや手続きにおいて説明を求められることがあります。当時の状況を整理しておくことが役立ちます。  

何を記録しておくか

  • 別居を決意するに至った出来事と、その日付
  • 相手の言動により心身に影響が出た場合の状況
  • 生活費の受け渡しの状況
  • 別居について相手に伝えた内容と、その反応

  後からまとめて書き起こすよりも、その都度記しておくほうが内容が具体的になります。日記やメモ、メッセージの履歴といった形で残しておくことが考えられます。  

診断書がある場合

相手の言動により体調を崩し、医療機関を受診されている場合には、その記録が資料となります。受診の際に背景を伝えておくことで、診断書の記載に反映されることがあります。  

写真や録音

暴力による怪我がある場合には、日付がわかる形で写真を残しておくことが考えられます。暴言についても、録音が資料となる場合があります。 ただし、収集の方法によっては問題が生じることもあります。相手の持ち物を無断で調べる、機器を無断で設置するといった行為は避けるべきです。判断に迷われる場合には、行動に移す前にご相談いただければと思います。  

⑤ 住民票を移すかどうか

別居にあたって、住民票を移すべきかどうかという問題があります。  

移す場合の利点

  • 児童手当や各種の行政サービスを新住所で受けられる
  • お子さまの転校手続きが進めやすくなる
  • 郵便物が確実に届く
  • 別居の事実を客観的に示す資料となる

移す場合の留意点

住民票を移すと、相手が住民票の写しを取得することで、新しい住所を知られる可能性があります。 安全に関わる事情がある場合には、住民基本台帳の閲覧等制限という制度を利用できます。市区町村の窓口に申し出ることで、相手からの請求を制限してもらえます。 この申出には、配偶者暴力相談支援センターや警察などが発行する書類が必要となることがあります。事前に窓口で確認されるとよいでしょう。  

⑥ 子どもを連れて別居する場合

お子さまを連れて家を出る場合、いくつか注意しておきたい点があります。  

連れ出し方が問題となることがある

お子さまを連れて別居すること自体は、それだけで違法となるものではありません。日常的に養育してきた親が、引き続き養育するために連れて行くという状況であれば、通常は問題となりません。 一方、学校や保育園から無断で連れ出す、相手が養育していた子を強引に連れ去るといった態様の場合には、後の親権や監護者の判断において不利に評価されることがあります。  

相手への連絡

可能であれば、別居後に相手へ連絡し、お子さまが無事であること、今後の面会について話し合う意思があることを伝えておくことが望まれます。 連絡を一切絶つと、相手が子の引渡しを求める手続きをとる可能性があります。また、面会交流を拒む姿勢と受け取られることもあります。  

学校への連絡

転校を伴う場合には、在籍していた学校への連絡が必要です。転校しない場合でも、状況を伝えておくことで、相手が突然迎えに来た際の対応について相談できる場合があります。  

⑦ 郵便物と各種の連絡先

郵便物の転送

郵便局に転居届を提出することで、1年間は郵便物が新住所へ転送されます。手続きは窓口のほか、インターネットでも行えます。 ただし、同居家族が転送を解除することも可能な仕組みとなっています。重要な郵便物については、送付先の変更手続きを個別に行っておくほうが確実です。  

変更しておきたい送付先

  • 銀行、クレジットカード会社
  • 携帯電話会社
  • 保険会社
  • 勤務先

  これらは、相手に知られたくない情報が含まれることもあります。別居後の早い段階で手続きを済ませておくことが望まれます。  

⑧ 住まいをどうするか

別居先をどこにするかは、費用と生活のしやすさの両面から検討することになります。  

実家に戻る場合

住居費の負担がなく、お子さまの世話について協力を得られる点が利点となります。一方、実家の所在地が相手に知られている場合には、訪ねて来られる可能性もあります。 また、ご家族との関係によっては、長期の同居が負担となることもあります。当面の滞在として位置づけ、その後の住まいを並行して検討される方もいらっしゃいます。  

賃貸を借りる場合

初期費用として、敷金・礼金・仲介手数料など、家賃の4か月分から5か月分程度が必要となることが一般的です。 収入がない状態では審査に通りにくいことがあります。親族に連帯保証人を依頼する、保証会社を利用するといった方法を検討することになります。  

公的な住宅

自治体によっては、母子世帯や父子世帯を対象とした住宅の制度が設けられていることがあります。所得の基準などの条件がありますが、家賃負担を抑えられる場合があります。 また、安全に関わる事情がある場合には、一時的に保護を受けられる施設もあります。配偶者暴力相談支援センターで相談することができます。  

⑨ 別居が離婚に与える影響

別居期間は、婚姻関係が破綻しているかどうかを判断する際の要素のひとつとなります。 何年で離婚が認められるという明確な基準はありませんが、期間が長くなるほど、関係の修復が難しいと評価されやすくなります。  

別居の経緯も考慮される

一方的に家を出た場合、その経緯によっては不利に働くことがあります。特に、生活費を渡さないまま出た側については、悪意の遺棄と評価される可能性があります。 やむを得ない事情があって別居に至ったのであれば、その事情を説明できるようにしておくことが望まれます。  

別居中の異性との交際

別居中であっても、離婚が成立するまでは婚姻関係が続いています。この間に他の異性と関係を持った場合、不貞行為として慰謝料を請求される可能性があります。 もっとも、別居期間が長く、すでに婚姻関係が破綻していたと認められる場合には、慰謝料が認められないこともあります。判断は個別の事情によります。  

⑩ よくあるご質問

Q. 別居することを相手に伝えるべきでしょうか。

A. 一概には言えません。話し合える関係であれば、事前に伝えることで無用な混乱を避けられます。一方、伝えることで妨げられるおそれがある場合や、安全に関わる事情がある場合には、別居後に連絡するという方法もあります。ご事情を伺ったうえで、進め方をご一緒に検討いたします。  

Q. 家を出ると不利になると聞きました。

A. 家を出たこと自体で不利になるわけではありません。問題となるのは、生活費を渡さないまま出た場合や、正当な理由なく同居義務を放棄したと評価される場合です。事情があって別居に至ったのであれば、それを説明できるようにしておくことが大切です。  

Q. 相手が別居に反対しています。

A. 別居に相手の同意は必要ありません。夫婦には同居義務がありますが、これを強制する手段は用意されていないためです。ただし、婚姻費用の請求や離婚の協議 を進めるうえで、別居に至った経緯を説明できるようにしておくことが望まれます。  

Q. 別居中の生活費を払ってもらえません。

A. 家庭裁判所に婚姻費用分担調停を申し立てることができます。調停が成立しない場合でも審判に移行し、裁判所が金額を定めます。定められた金額が支払われない場合には、給与の差押えといった手続きをとることも可能です。  

まとめ

別居を始める前の準備について、本記事で整理した内容を振り返ります。  

  • 住まい、生活費、子どもの環境、相手への伝え方を事前に整理しておく
  • 健康保険証や通帳など、必要な書類は持ち出しておく
  • 相手の財産に関する資料は、写しや写真という形で確保しておく
  • 婚姻費用は請求した時点からが対象となるため、別居後すぐに意思を示す
  • 住民票を移すかどうかは、行政サービスと安全の両面から判断する
  • 子どもを連れる場合、連れ出し方と相手への連絡に配慮する
  • 別居期間は離婚の判断材料となるが、経緯も含めて評価される

  「別居を考えているが何から準備すればよいかわからない」「家を出る前に確認しておきたい」といったご相談を承っております。ご事情を伺いながら、進め方をご一緒に検討いたします。

著者

後藤千絵先生
弁護士

後藤ごとう 千絵ちえ

京都府生まれ。滋賀県立膳所高校、大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に総合職として入社。

30歳を過ぎてから法律の道を志し、2006年に旧司法試験に合格。

08年に弁護士登録し、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所を設立。

離婚や相続など、家族の事案を最も得意とし、近年は「モラハラ」対策にも力を入れている。

著作に「誰も教えてくれなかった離婚しないための結婚の基本」(KADOKAWA)、『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』(三笠書房)がある。

お問合せ

お電話でのお問い合わせは平日・土日祝日 07:00 - 24:00となります。