「離婚後に受け取れる養育費はいくらが相場なのか」「自分のケースではどのくらいになるのか」——養育費の金額は、離婚を決意した方が最初に気になる問いのひとつです。「算定表を見たが複雑でよくわからない」「相手に言われた金額が妥当かどうか判断できない」という方も多くいます。
本記事では、養育費の算定の仕組み・年収別・子どもの人数別の目安金額・算定表の見方・取り決めの方法と注意点まで、西宮市・尼崎市を中心に離婚案件を手がけるフェリーチェ法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
① 養育費とは——誰が誰に支払うのか
養育費とは、未成年の子どもが成人するまでの間、子どもの生活・教育・医療などに必要な費用を非監護親(子どもと一緒に暮らしていない親)が監護親(子どもと一緒に暮らしている親)に対して支払うお金です。
養育費の支払い義務は親が子どもを扶養する義務(民法877条)に基づくもので、父母のどちらが親権を持つかに関係なく、収入の多い側が少ない側に支払う義務があります。また、専業主婦(主夫)であっても、収入がない分だけ養育費を多く受け取る権利があります。
② 養育費の算定方法——裁判所の算定表が基準
養育費の金額は「養育費算定表」(裁判所が公表しているガイドライン)をもとに決めるのが実務上の基準です。算定表は双方の年収・子どもの人数・年齢(14歳以下か15歳以上か)によって目安の月額が決まる仕組みです。
協議離婚でも調停でも裁判でも、この算定表が参照されるため、まず算定表の目安を知っておくことが交渉の出発点になります。
③ 年収別・子どもの人数別の養育費の目安
以下は、養育費算定表をもとにした目安の月額です。「義務者(支払う側)の年収」と「権利者(受け取る側)の年収」の組み合わせで変わります。ここでは権利者が専業主婦(収入ゼロ)の場合の目安を示します。
| 義務者の年収 | 子1人(0〜14歳) |
|---|---|
| 300万円 | 2〜4万円 |
| 400万円 | 4〜6万円 |
| 500万円 | 6〜8万円 |
| 600万円 | 6〜8万円 |
| 700万円 | 8〜10万円 |
| 800万円 | 10〜12万円 |
| 1000万円 | 14〜16万円 |
| 義務者の年収 | 子2人(14歳以下) |
|---|---|
| 400万円 | 6〜8万円 |
| 500万円 | 8〜10万円 |
| 600万円 | 8〜10万円 |
| 700万円 | 10〜12万円 |
| 800万円 | 12〜14万円 |
| 1000万円 | 14〜16万円 |
ポイント:上記はあくまで「権利者の収入がゼロの場合」の目安です。
権利者(受け取る側)にも収入がある場合は、その分だけ義務者の負担が減ります。
また、子どもの年齢が15歳以上になると教育費が増えるため、月額が高くなります。
④ 算定表の金額より増減するケース
養育費が算定表より高くなりやすいケース
- 子どもが私立学校に通っており、特別な教育費がかかっている
- 子どもに持病・障害があり、医療費が通常より多くかかる
- 義務者の収入が算定表の上限(年収2,000万円程度)を超えている
養育費が算定表より低くなりやすいケース
- 義務者が再婚して扶養する家族が増えた(ただし大幅な減額は認められにくい)
- 義務者が重篤な疾病・失業などで収入が著しく減少した
- 権利者の収入が大幅に増加した
⑤ 養育費の取り決め方と注意点
取り決めは必ず書面で残す
口頭での合意は「言った・言わない」になるリスクがあります。協議で合意できた場合は、必ず書面(離婚協議書)にまとめ、できれば執行認諾文言付き公正証書にしておくことをお勧めします。公正証書があれば、支払いが止まったときに裁判なしで直接差押えができます。
成人年齢(18歳)まで?20歳まで?22歳まで?
養育費の支払い期間は一般的に「20歳まで」とされるケースが多いですが、近年は「大学卒業まで(22歳の3月まで)」という取り決めも増えています。2022年の民法改正で成年年齢が18歳になったことにより、「18歳まで」という取り決めをするケースも出てきています。子どもの進学予定を考慮したうえで決めることが重要です。
養育費は後から変更できる
一度決めた養育費も、その後の事情の変化(義務者の収入の大幅変動・子どもの進学・再婚による扶養家族の増加など)があれば、調停を申し立てて変更することができます。「決めたら変えられない」ということはありません。ただし、算定表より大幅に低い金額で取り決めた場合も、後から調停で増額を求めることが可能です。
⑥ よくある質問
Q. 相手が「月2万円しか払えない」と言っています。算定表より低いのですが、応じなければなりませんか?
A. 応じる必要はありません。算定表は裁判所が定めた基準であり、調停・審判でもこの基準が使われます。相手が「払えない」と言っても、収入がある以上は算定表に近い金額が認められます。「払えない」という主張の根拠(収入の証拠)を提出させ、適正な金額での取り決めを求めることをお勧めします。
Q. 相手が自営業者で収入がよくわかりません。どうやって養育費を決めますか?
A. 自営業者の収入は確定申告書の「所得金額」を基準にします。確定申告書の提出を求め、その数字をもとに算定表を適用します。収入が少なく申告されている可能性がある場合は、通帳の入出金・売上の記録などから実態の収入を推計する方法もあります。調停の中で書類の提出を求めることができます。
Q. 養育費の取り決めをせずに離婚してしまいました。今からでも請求できますか?
A. はい、取り決めがなくても請求できます。家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てることで、調停委員のもとで金額を決めることができます。ただし、取り決めがなかった期間の過去分は原則として請求した時点以降しか認められないため、早めに申し立てることが重要です。
まとめ
- 養育費は裁判所の算定表をもとに、双方の年収・子どもの人数と年齢で決まる
- 権利者が専業主婦の場合、義務者年収500万円で子1人(14歳以下)なら月6〜8万円が目安
- 私立学校の学費・子どもの医療費など特別な事情がある場合は算定表より高くなることがある
- 取り決めは必ず書面化し、できれば執行認諾文言付き公正証書にする
- 支払い期間は「大学卒業まで(22歳3月)」とする取り決めが近年増加している
- 取り決め後も事情の変化があれば調停で変更できる——低すぎる取り決めは後から増額を求められる
「相手から提示された金額が算定表より低い」「取り決めをしていなかったが今から請求したい」——養育費の問題は弁護士に相談することで適正な金額での解決につながります。まずはお気軽にご相談ください。





