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面会交流を拒否されたらどうする?「間接強制」と「条件設定」のポイントを弁護士が解説

2026-06-21
離婚

「離婚してから子どもに会えていない」「毎回何かと理由をつけて面会を断られる」「面会の取り決めをしたのに相手が守ってくれない」——離婚後の面会交流をめぐるトラブルは、離婚問題の中でも特に感情的なものになりやすく、解決が長期化しやすい分野のひとつです。
面会交流は、子どもが離れて暮らす親と定期的に交流するための制度です。子どもの健全な成長のために重要であるとして、法律上も保護されています。しかし、「相手が会わせてくれない」という状況に直面したとき、法的にどんな手段が取れるのかを正確に知っている方は多くありません。
本記事では、面会交流の基本的な仕組み・具体的な条件の設定方法・相手が拒否した場合の「間接強制」という法的手段・面会交流が制限・拒否できるケース・条件変更の方法まで、西宮市・尼崎市を中心に離婚案件を手がけるフェリーチェ法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
 

① 面会交流とは——子どもの権利として位置づけられる

面会交流とは、離婚後に子どもと離れて暮らす親(非監護親)が、定期的に子どもと会ったり連絡を取り合ったりする機会のことです。民法766条は、離婚の際に父母が「子の監護について必要な事項」を定めると規定しており、面会交流はその中核的な内容のひとつです。
かつては「親の権利」として語られることが多かった面会交流ですが、現在の法律解釈・裁判実務では「子どもが双方の親と関わり続けることができる子どもの権利」として位置づけられるようになっています。この視点の転換は、面会交流の取り決めや紛争解決において非常に重要な意味を持ちます。
 

面会交流で定められる主な内容

  • 面会の頻度(例:月1回・月2回・隔週など)
  • 面会の日時・時間帯・終了時刻
  • 面会場所(自宅・公園・施設・第三者機関など)
  • 子どもの引渡し方法(どちらが送迎するか・受け渡し場所など)
  • 宿泊を伴う面会の有無と条件
  • 学校行事・誕生日・長期休暇中の特別面会の取り決め
  • 写真・手紙・電話・ビデオ通話などの間接交流の方法

② 面会交流の「条件設定」——具体的であるほど後のトラブルを防げる

面会交流において最も重要なのが、取り決めの「具体性」です。「適宜面会させる」「月1回程度」という曖昧な内容では、後から「その日は都合が悪い」「気が向かない」という理由で断られたときに、法的な強制手段が使えなくなってしまいます。
 

具体的な条件設定の重要性——間接強制の前提条件

後述する「間接強制」という法的手段を使うためには、面会交流の取り決めが「執行できる程度に具体的」であることが必要です。裁判所が間接強制を認めるためには、「いつ・どこで・どのように子どもを引き渡すか」が明確に定められていなければなりません。
「月1回、週末に会わせる」という内容では具体性が足りず、間接強制が認められないケースがあります。「毎月第2土曜日の午前10時に〇〇駅改札前で引き渡し、午後5時に同場所で返す」という形式が、法的手段を使うための最低限の具体性です。
 

条件設定の具体例

設定項目具体的な記載例
頻度・日時毎月第2土曜日 午前10時〜午後5時
引渡し場所○○駅○番出口改札前
送迎の担当行き:監護親が送る 帰り:非監護親が送る
宿泊夏休み・冬休みに各1泊2日(事前に30日前までに連絡)
間接交流毎週日曜日の午後7〜8時にビデオ通話(30分以内)
キャンセル時前日正午までに連絡 翌月に振替を優先
連絡方法LINEにて双方合意の上で連絡

 
取り決めは「公正証書」または「調停調書」の形式にしておくことを強くお勧めします。
公正証書・調停調書であれば、相手が取り決めを守らない場合に間接強制の申立てが可能になります。
口頭の合意や普通の合意書では、強制手段が使えないことがあります。
 

③ 間接強制とは——面会交流を守らせる法的手段

相手が取り決めた面会交流を正当な理由なく拒否し続けている場合、「間接強制」という法的手段を使うことができます。間接強制とは、裁判所が義務を履行しない相手に対して「履行しない場合は一定額のお金を支払え」と命じることで、間接的に義務の履行を促す制度です。
 

間接強制の仕組み

家庭裁判所に間接強制の申立てをすると、裁判所は面会交流の不履行1回につき一定額(例:1回あたり3万〜10万円程度)の支払いを相手に命じます。この金額は強制的に徴収できるため、相手への心理的・経済的なプレッシャーになります。
間接強制が認められるためには、①調停調書・審判書・公正証書(執行認諾文言付き)など執行力のある書面があること、②その内容が子どもを引き渡す日時・場所・方法が具体的に特定されていること、という2つの条件を満たす必要があります。
 

間接強制が認められた場合の効果

間接強制命令が出ると、相手が面会交流を拒否するたびに金銭の支払い義務が発生します。給与や預貯金への差押えで強制的に徴収することも可能です。ただし、間接強制は「面会そのものを物理的に強制する手段」ではないため、相手が金銭を払ってでも会わせないという姿勢を取れば、面会自体を実現させることには限界があります。
 

間接強制と直接強制の違い

面会交流の場面では「直接強制(子どもを物理的に連れてこさせる)」は、子どもの心身への影響を考慮して認められていません。間接強制が面会交流を実現するための現実的な法的手段となっています。ただし、相手が間接強制の金額を払い続けてでも面会を拒否する場合は、親権者変更の申立てなど別の手続きも検討する必要があります。
 

④ 面会交流が拒否・制限できるケース

面会交流は子どもの権利として重要視されていますが、すべての状況で実施しなければならないわけではありません。子どもの安全・心身の健全な発展を守るために、面会交流が制限・停止される場合があります。
 

面会交流の拒否・制限が認められるケース

  • 非監護親によるDV・虐待:子ども自身またはその前での配偶者への暴力が認められる場合
  • 子どもへの性的虐待:過去または現在の性的虐待の事実がある場合
  • 子どもが強く拒絶している:子ども自身(特に年長の子ども)が面会を強く拒否しており、その意思に合理的な理由がある場合
  • 連れ去りのリスク:面会を利用して子どもを連れ去るおそれが具体的にある場合
  • 監護親へのハラスメント:面会を口実に監護親への接触・嫌がらせが繰り返されている場合
  • 子どもへの心理的影響:面会後に子どもが著しく情緒不安定になるなど、明らかに悪影響が生じている場合

 
注意:「子どもが行きたくないと言っている」という理由だけで面会交流を拒否すると、
正当な理由がないとして間接強制を受けるリスクがあります。
子どもの拒絶の背景にDVや虐待などの事情があるならば、その事情を弁護士を通じて適切に主張することが重要です。
単なる「なんとなく嫌がっている」だけでは拒否の正当な理由とは認められにくいため、慎重な判断が必要です。
 

⑤ 面会交流の条件を変更したい場合

離婚時に取り決めた面会交流の条件が、その後の状況変化によって合わなくなってくることがあります。子どもの成長・転居・学校行事・親の再婚など、様々な理由で変更が必要になる場面があります。
 

変更が認められやすいケース

  • 子どもが成長して自分のスケジュール(部活・習い事・友人関係)を優先させたい
  • 監護親または非監護親が転居して、従来の引渡し場所・時間が現実的でなくなった
  • 監護親が再婚し、家庭環境が変わった
  • 子どもが非監護親との関係に強い拒絶感を持つようになった(背景の確認が必要)
  • 非監護親の生活環境の変化(転職・再婚・新しい子どもが生まれたなど)

条件変更の手順

まずは相手と話し合い(協議)を試みます。双方が合意できれば、変更後の内容を書面(公正証書または調停調書)にまとめます。合意できない場合は、家庭裁判所に「面会交流調停」を申し立て、調停委員を交えて条件の変更を話し合います。
調停でも合意できない場合は審判に移行し、裁判官が子どもの利益に照らして条件の変更を決定します。変更を求める側は、変更が「子どもの利益のため」であることを具体的に示す必要があります。
 

⑥ 面会交流と監護権・親権の関係

面会交流を拒否し続けると親権・監護権に影響する
正当な理由なく面会交流を繰り返し拒否することは、非監護親の権利を侵害するだけでなく、子どもの福祉を損なう行為として裁判所に評価される可能性があります。面会交流を理由のない形で阻害し続けることは、親権・監護権変更の申立てにおいてマイナスの事情として考慮されることがあります。
「相手に子どもを会わせたくないから監護者になった」という動機や行動パターンが認定されると、それ自体が「相手との面会交流を促進できない親」として評価され、逆に不利になる危険があります。
 

面会交流支援機関の活用

両親が直接やり取りすることが難しい場合や、DVがあって直接の接触を避けたい場合には、面会交流支援機関(「家庭問題情報センター(FPIC)」など)を利用することができます。支援機関が引渡しの立会い・調整を行うことで、当事者同士が顔を合わせずに面会交流を実現できます。
面会交流支援機関の利用は調停や審判の中で取り決めることができ、また両者の合意があれば任意で利用することも可能です。DVがある場合など、子どもの安全を確保しながら面会を実現するための有効な選択肢です。
 

⑦ よくある質問

Q. 取り決めた面会交流を相手が守りません。いきなり間接強制を申し立てられますか?

A. 間接強制を申し立てるためには、調停調書・審判書・執行認諾文言付き公正証書など「執行力のある書面」があることが前提条件です。また、取り決めの内容が「日時・場所・方法が具体的に特定されている」必要があります。これらの条件を満たしていれば、いきなり間接強制の申立てをすることは法律上可能ですが、まず相手に書面で面会の実施を求めた記録を残しておくと申立ての際の証拠になります。
 

Q. 取り決めの内容が「月1回程度」という曖昧なものです。間接強制は使えますか?

A. 「月1回程度」という曖昧な内容では、間接強制が認められないことがほとんどです。まず調停を申し立て、日時・場所・方法を具体的に特定した内容に取り決めを変更することが先決です。取り決めを具体化することが、法的手段を使える状態への第一歩になります。弁護士に相談しながら進めることをお勧めします。
 

Q.DVがあった相手との面会交流が決まってしまいました。子どもを会わせなければなりませんか?

A. DVや虐待の事実がある場合は、面会交流の制限・停止を求めることができます。調停・審判において「子どもの安全が脅かされる具体的な事情」を示すことで、面会交流の停止・制限・支援機関を通じた実施などの条件変更が認められる可能性があります。証拠(診断書・被害届・録音など)を整えたうえで弁護士に相談し、適切な手続きを取ることをお勧めします。
 

Q. 相手が養育費を払っていないのに面会交流は実施しなければなりませんか?

A. 養育費の不払いと面会交流の実施は、法律上は別々の問題として扱われます。「養育費を払っていないから面会交流は認めない」という主張は、法的には認められません。養育費については差押えなど別の手段で対応しながら、面会交流は子どもの利益のために別途適切に対応するという姿勢が求められます。ただし、こうした状況は弁護士に相談して全体的な解決策を立てることをお勧めします。
 

まとめ

面会交流をめぐるトラブルは、適切な取り決めと法的知識があれば多くの場面で解決できます。本記事の要点を振り返ります。
 

  • 面会交流は「子どもの権利」として法律上保護されており、正当な理由なく拒否し続けることは法的なリスクを伴う
  • 取り決めは「日時・場所・引渡し方法」まで具体的に定めることが、後の法的手段を使うための前提条件
  • 取り決めは調停調書・審判書・執行認諾文言付き公正証書の形式にすることで、不履行時に間接強制が可能になる
  • 間接強制とは「不履行1回ごとに金銭支払いを命じる」制度で、相手への経済的プレッシャーとして機能する
  • DV・虐待・子どもの強い拒絶など正当な理由がある場合は、面会交流の制限・停止を求めることができる
  • 面会交流の拒否が続く場合は親権・監護権変更の申立ての根拠にもなりうる——軽視できない問題
  • 当事者間の直接接触が難しい場合は面会交流支援機関の活用が有効

 
「何度取り決めても守ってもらえない」「間接強制を使いたいが手続きがわからない」「DVがあって相手に子どもを会わせることが不安」——面会交流のトラブルは、感情的になりやすい分野だからこそ、冷静に法的な対応策を検討することが重要です。まずはお気軽にご相談ください。

著者

後藤千絵先生
弁護士

後藤ごとう 千絵ちえ

京都府生まれ。滋賀県立膳所高校、大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に総合職として入社。

30歳を過ぎてから法律の道を志し、2006年に旧司法試験に合格。

08年に弁護士登録し、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所を設立。

離婚や相続など、家族の事案を最も得意とし、近年は「モラハラ」対策にも力を入れている。

著作に「誰も教えてくれなかった離婚しないための結婚の基本」(KADOKAWA)、『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』(三笠書房)がある。

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