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熟年離婚は財産分与や年金がポイント 退職金の分割方法について徹底解説

熟年離婚は財産分与や年金がポイント 退職金の分割方法について徹底解説
2025-05-26
離婚

熟年離婚では夫婦で築いた多額の資産の財産分与、年金分割が問題になります。家や土地などの不動産も大切ですが、中でも退職金が重要になります。退職金は2分の1に分けるのではなく婚姻期間に応じた分について分けます。熟年離婚する際の財産分与のポイントについて解説します。

熟年離婚する際の退職金の財産分与方法と請求のポイント

熟年離婚では、子どもの親権をめぐるトラブルは生じませんが、長年築いた財産の分割方法、つまり、財産分与が大きな問題になります。
中でも、退職金は定年後に入る大きなお金の一つです。退職者の特有財産と思われがちですが、実際には、夫婦の共有財産になるので財産分与しなければなりません。
ただ、退職金を単純に2分の1に分ければよいわけではなく、厳密な計算方法があります。
この記事では、熟年離婚する際の退職金の財産分与の方法について解説します。

熟年離婚とは?

熟年離婚とは、婚姻期間の長い夫婦が離婚することを意味します。
概ね、婚姻期間が20年以上の中高年夫婦が離婚する場合のことで、多くの場合は年齢が50歳代以降になってからの離婚になります。

熟年離婚と退職金の関係

熟年離婚する際は、夫婦が婚姻期間中に築いた財産を分け合うことになります。これを財産分与と言います。
そして、退職金も財産分与しなければなりません。
退職金は、離婚前に既にもらっている場合はもちろんですが、離婚後にもらう場合でも、財産分与することになります。
なぜなら、退職金は長年その会社で働き続けたことに対する対価の意味があるところ、退職金をもらう人がその会社で働き続けられたのは、本人の努力だけでなく配偶者の協力があったためであると考えることができるからです。
少し古いですが、内助の功という考え方によるものです。
熟年離婚の場合、勤続年数が数十年と長く、また、配偶者が支えた期間も長いために、退職金から財産分与を受けられる金額も数百万円といった金額になることが多いです。

熟年離婚の特徴

熟年離婚には、婚姻期間の短い夫婦や未成年の子どもがいる夫婦とは違った特徴があります。
子どもの親権争いはない一方で、多額の財産分与が問題になる事が多いです。
具体的に見ていきましょう。

子どもの親権争いはない

熟年離婚では、婚姻期間が20年以上あることが多く、夫婦に子どもがいる場合でも既に成人していることがほとんどです。
そのため、未成年の子どもの親権を巡って夫婦が対立するという状況は生じないことがほとんどです。養育費、面会交流なども同様です。
熟年離婚の夫婦には、孫がいることがあります。
最近では、祖父母が孫と面会交流する権利も注目されるようになっていますが、祖父母が離婚しても孫との交流には基本的に何の影響もありません。
熟年離婚しても、孫と定期的に会うことは可能です。

多額の財産分与が問題になる

熟年離婚では、婚姻期間が20年以上と長いことから、その間に夫婦が協力して築いた財産も多額に上ることがほとんどです。
こうした多額の財産を財産分与で分け合うことが大きな問題になります。
退職金はもちろんですが、給与収入等、で貯めた銀行の預貯金、家や土地などの不動産、株式や国債などの投資債権などが財産分与の対象になります。
また、年金も婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金部分について年金分割することになります。

長年のモラハラや浮気が離婚原因の場合は多額の慰謝料も

熟年離婚では、夫婦の一方が配偶者による長年にわたるモラハラや精神的虐待に耐え続けていたケースもあります。このような夫婦が離婚する場合は、モラハラや精神的虐待に対する慰謝料も併せて請求できます。モラハラや精神的虐待が長期間にわたり、継続していた場合は、慰謝料の金額も多額になるケースもあります。
また、配偶者が長年にわたり、浮気や不倫、不貞な関係を続けていたケースもやはり、慰謝料の金額が多額になります。

熟年離婚による財産分与の具体的な額

財産分与の額は婚姻期間が長くなるほど高額になる傾向です。
例えば、婚姻期間が5年以下の夫婦だと財産分与の金額は100万円以下が多いですが、婚姻期間が20年以上の夫婦の場合は600万円以上1000万円以下といった金額の財産分与を受けるケースが多いです。

しかし、子育てや教育などのために多額の養育費を負担していた夫婦の場合ですと、財産分与できる財産が少なくなっていることもあります。
このような場合は、退職金が離婚する時の財産分与において大きなウェイトを占めることになります。

熟年離婚する際の財産分与の割合

熟年離婚する際の財産分与の割合は、一般的な離婚と同じで夫婦が2分の1ずつ分けるのが原則です。
夫婦によっては、どちらか一方の収入が多いこともあります。
例えば、妻が専業主婦で主に収入を得ていたのは夫というケースもあるでしょう。
このような場合でも、夫が収入を得られたのは妻の支えがあってのことと考えられるため、専業主婦の妻でも、夫婦の全財産の2分の1に相当する財産分与を受ける権利があります。

また、共働きの夫婦の場合でも収入に差があるケースもあります。
例えば、夫の年収が1000万円、妻の年収は500万円といった具合で格差があることもあるでしょう。
こうした場合も、お互いにそれだけの収入を得られたのはパートナーがいたからこそなので、妻も夫婦の全財産の2分の1に相当する財産分与を受けられます。
夫よりも妻の年収の方が多い場合でも、夫が全財産から2分の1の財産分与を受けられます。

財産分与の割合が2分の1にならないケース

夫婦の財産分与の割合が2分の1にならないこともあります。主なケースは次のような場合です。

夫婦が話し合って財産分与の割合を決める場合

財産分与の割合が2分の1であることの根拠は、民法768条3項に「婚姻中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。」と規定されていることによります。
しかし、夫婦によっては2分の1とすることが妥当ではないケースもあります。このような場合は、夫婦の話し合いにより割合を変更することもできます。

財産分与の割合を決める際に考慮されるのは次のような点です。

  • 夫婦が婚姻中に取得し又は維持した財産の額
  • 財産についての夫婦それぞれの寄与の程度
  • 夫婦の婚姻期間
  • 婚姻中の生活水準
  • 婚姻中の協力及び扶助の状況
  • 夫婦の年齢
  • 夫婦の心身の状況
  • 夫婦の職業及び収入
  • その他一切の事情

夫婦の一方が会社経営者や医師などで突出した収入を得ていた場合

夫婦の一方が会社経営者や医師などの場合は、突出した収入を得ている可能性があります。
こうしたケースでは、配偶者の協力はあるにしても、本人の努力や能力により大きな収入を得ていた面があるため、財産分与の割合が変わることもあります。
なお、会社経営者や医師でも収入が一般的なサラリーマンと同程度なら、財産分与の割合は原則通り2分の1になることが多いと考えられます。

夫婦の一方が芸能人やスポーツ選手などで突出した収入を得ていた場合

夫婦の一方が芸能人やスポーツ選手などの場合もやはり突出した収入を得ている可能性があります。
この場合も、本人の才能や努力によって大きな収入を得ていた面がありますから、財産分与の割合が変わることもあります。

財産分与の対象になる財産

財産分与の対象になる財産は、離婚時に夫婦が有するすべての共有財産です。
それに対して夫婦それぞれが個別に有する財産のことを特有財産と言いますが、こちらは財産分与する必要はありません。

熟年離婚における特有財産とは

特有財産とは次のような財産です。

  • 婚姻前から夫婦がそれぞれ有していた財産
  • 夫婦がそれぞれの親や親族から相続した財産
  • 夫婦がそれぞれの親や親族から贈与された財産

熟年離婚であってもこうした特有財産については財産分与する必要はありません。
例えば、土地や建物が夫の親から相続した遺産であれば、夫の特有財産になるので、離婚しても妻が財産分与を受けることはできません。

ただ、熟年離婚の場合は、共有財産と特有財産の区別がつかなくなっていることもあります。
特に、親から相続した預貯金や現金は、夫婦の預貯金の中に混ぜてしまうと、いくら相続したのかはっきりしないこともあります。
子どもの学費などで使ってしまうこともあるでしょう。
そのような場合は、特有財産であることの立証が難しいこともあります。

一方、土地や建物等の不動産は不動産登記簿によって、夫婦のどちらが相続したものなのかがはっきりと分かるため、特有財産である旨の主張がしやすいです。

熟年離婚する際の共有財産とは

共有財産とは次のような財産で特有財産以外のもののことです。

  • 土地、建物、マンションなどの不動産
  • 現金
  • 預貯金
  • 自動車
  • 生命保険等の保険商品
  • 退職金
  • 株式などの有価証券、投資信託
  • 家財道具
  • 美術品、貴金属
  • 借金、住宅ローン等の負債

夫婦どちらかの特有財産であることがはっきりしているもの以外は、原則として共有財産に該当します。

熟年離婚する際の退職金の財産分与方法

熟年離婚においては退職金の財産分与が大きな問題になります。
退職金は、勤続期間に応じて支払われるのが一般的ですが、勤続期間のうち、婚姻期間に相当する分は配偶者にも財産分与請求する権利があります。
配偶者にも権利がありますが、単純に退職金の半分を請求できるというものではないので注意してください。

退職金から財産分与できる金額の計算方法

退職金につき財産分与を請求する際は、まず、退職金のうち財産分与の対象となる金額を割り出し、その金額を2分の1で分けるのが原則です。
具体的な計算式は次のようになります。

(退職金の額÷勤続年数)✕婚姻期間=退職金のうち財産分与の対象となる金額
退職金のうち財産分与の対象となる金額÷2=退職金から財産分与できる金額

例えば、熟年夫婦が離婚することになり、妻が夫の退職金について財産分与を求めたとします。
夫の退職金の額が1800万円で勤続年数が30年、そのうち婚姻期間が25年だとしましょう。
この場合、次のように計算します。

(1800万円÷30年)✕25年=1500万円
1500万円÷2=750万円

つまり、妻は夫に対して、退職金の分として750万円の財産分与を請求できることになります。

では、婚姻期間の25年のうち、5年間は夫婦の仲が悪くなって別居していた場合はどうでしょうか。
この場合は、その5年分は婚姻期間から差し引くことになります。
そのため、婚姻期間を25年から5年差し引き20年として次のように計算します。

(1800万円÷30年)✕20年=1200万円
1200万円÷2=600万円

このように別居期間がある場合は、財産分与できる額が減額されます。

退職金が支払われていない段階での財産分与方法

退職金は退職しないともらえないので、配偶者が勤務を続けている場合は、退職金が手元にありません。
代表的な退職金の計算方法としては、「離婚時(または別居時)に自己都合退職したと考えたときの退職金額」もしくは、「退職予定(定年退職)時に支給される退職金額」を基準とする方法があります。

まず、配偶者が勤務している会社に退職金を支払う旨の規定が設けられているかどうか確認します。
具体的には、雇用契約書又は会社の就業規則の定めを確認します。
退職金の制度としては、

  • 会社が用意する退職一時金制度
  • 中小企業退職金共済制度
  • 特定退職金共済制度

のいずれかであることが多いです。
そして、退職金を受け取るためには、一定の勤続年数が必要なところ、殆どの会社は3年以上勤務することが条件となっています。
こうした点を踏まえて、退職金が支払われるのか、退職金を受け取れるだけの勤続年数なのかを確認しましょう。

なお、退職金が支払われるのが何十年も先というケースでは、退職金につき財産分与請求が不可能であることもあります。

退職金が支払われた後の財産分与の請求方法

既に退職しているケースでは退職金が支払われているでしょう。
その場合は、支払われた退職金のうち、計算した金額分について財産分与請求が可能になります。
もちろん、退職金が既に使い込まれてなくなっている場合は、請求できなくなるので、迅速に請求することが大切です。

離婚後に退職金について財産分与を求めることができるのか?

離婚の時点で退職金が支払われていない場合は、離婚後、相手が定年退職するなどして退職金が支払われた段階で財産分与を求めることも可能です。
ただし、この場合は、元配偶者が退職するまで動向を把握していなければなりません。
突然、退職し、退職金を貰って行方をくらました場合は、相手の居所が分からず、結局退職金からの財産分与を受けられないという事態もありえます。

そのため、離婚する時に退職金の見込額を計算したうえで、その金額も含めて財産分与を受けておくことが大切と言えます。

まとめ

熟年離婚では、様々な財産の分割が問題になりますが、中でも退職金からの財産分与は大きな問題の一つです。
離婚する時点で退職金が支払われている場合は、使い込まれる前に早めに財産分与を求めましょう。
離婚の時点で退職金が支払われていない場合は、退職金の見込み額を計算したうえで、先に請求しておくことも検討してください。
退職金の問題も含めて、熟年離婚について夫婦の協議だけで解決できないときは、裁判所での離婚調停の手続きを利用することも可能です。
熟年離婚に伴う退職金は大きな問題になることが多いので、トラブルを抱える前に弁護士にご相談ください。

著者

後藤千絵先生
弁護士

後藤ごとう 千絵ちえ

京都府生まれ。滋賀県立膳所高校、大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に総合職として入社。

30歳を過ぎてから法律の道を志し、2006年に旧司法試験に合格。

08年に弁護士登録し、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所を設立。

離婚や相続など、家族の事案を最も得意とし、近年は「モラハラ」対策にも力を入れている。

著作に「誰も教えてくれなかった離婚しないための結婚の基本」(KADOKAWA)、『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』(三笠書房)がある。

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