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子の引き渡しの強制執行について

2020-10-01
離婚

夫婦で離婚の話し合いをしていて問題になるのが子どもの親権です。
離婚が成立する前に相手が子どもを連れて家を出てしまっていると、自身が親権を得ても子どもを引き渡してくれない場合があります。
そんな時は引き渡しの強制執行手続きを取ることになりますが、これには大きな問題がありました。
今回は、2020年4月から施行された「子の引き渡しの強制執行」についてご紹介します。

 

引き渡しの強制執行とは?

引き渡しの強制執行とは、引き渡す調停が成立する、引き渡しを命じる判決が出たにもかかわらず、相手が引き渡しに応じない場合に強制的に引き渡せるための手続きを言います。
これまで、「引き渡しの強制執行」といえば動産や不動産といったものが対象でしたが、時代の変化とともに離婚を進める夫婦間で子どもを対象に手続きが取られるようになりました。
しかし、子どもに関しては明文化されていないため時には失敗してしまうこともあり、子どもへの精神的負担が懸念されていました。
そんな背景から2019年5月に法改正があり、2020年4月から「子の引き渡しの強制執行」が施行されたのです。

 

改正前の問題点とは?

これまでの「引き渡しの強制執行」とは動産や不動産、債権が対象となっており、そこに子どもは含まれていません。
そのため、現行の法律を活用した方法が取られていました。
 

動産の引き渡しの強制執行を適用

これまでの法律では子どもの引き渡しについて明文化されていないため、子どもを動産と同様の取扱いにしていました。
ところが、ここで問題が発生します。
動産の引き渡しの強制執行には相手の立会いが必要とされています。
子どもを動産と同様の扱いにするということは、相手の立会いのもと子を連れてこなくてはなりません。
親権者や看護者が子どもの通う学校や塾に赴き、一緒に連れ帰ろうとしてもその場に相手がいないことから強制執行と認められないということが度々起こり、問題となっていました。
 

間接強制

引き渡しを拒む相手に対して、間接強制金の支払いを命じるのが間接強制です。
間接強制金の支払いに応じない場合は財産を差し押さえることができるため、引き渡しを間接的に促すことが可能です。
しかし、子を持つ親であれば「財産より子どもの方が大切」と考えるのは自然なことであり、あまり効力がありませんでした。

 

改正によって何が変わる?

法改正により、引き渡しの強制執行に「子の引き渡し」が明文化されました。
これにより、親権者や監護者だけでなく子ども自身にも少ない負担で引き渡しが可能になると期待されています。
具体的に何が変わったのか見ていきましょう。
 

必ずしも間接強制を実施してからでなくてもいい

これまではまず間接強制を申し立てて、決定が確定した日から2週間経過しなければ強制執行の申し立てができませんでした。

相手が間接強制に応じないと事前にわかっていたとしてもこの段階を踏まなくてはなりませんでしたが、法改正によって、相手が間接強制に応じないと見込まれる場合や、子どもの急迫の危険を防止するために必要と判断された時には最初から強制執行の申し立てができるようになったのです。
 

状況に応じた場所で強制執行が可能に

これまではプライバシーに配慮し、相手の住居などで執行されてきました。
しかし、改正後は事前に関係者に許可を取り、安全やプライバシーに配慮した方法を取るのであれば学校や幼稚園、保育所などでも強制執行が可能となり、成功率の向上を図っています。
 

執行官が権限を行使できる

子の引き渡しの強制執行を行うのは執行官です。
執行官は執行場所に立ち入って子どもを捜索しますが、その際、必要に応じて封鎖したドアを開く権限があります。

そして、職務の執行に対して抵抗を受ける場合は威力を持って抵抗を排除することも可能としており、執行官には強い権限が与えられています。

その一方で、強制執行が子どもの心身に悪影響を及ぼさないよう配慮しなければならないことも定められており、暴力的な方法ではなくあくまでも子どもの情操面に配慮した行動が求められています。
 

相手の立会いが不要になった

これまで動産の引き渡しの強制執行を適用していた時には相手の立会いが必要でした。
しかし、改正後の子の引き渡しの強制執行には相手の立会いは不要となり、親のどちらか片方と執行官が揃っていれば子の引き渡しの強制執行が可能となったのです。

執行官のみで執行ができないことには理由があります。
引き渡しに応じない相手は、子どもからみると親であり、一緒にいて安心できる存在です

どんな事情があるのせよ、安心できる存在から引き離され、知らない大人たちに囲まれることは子どもにとって不安しかありません。

そういった子どもの精神面に配慮するために、執行官と親のどちらか片方が揃わなければ引き渡しの強制執行が行えないと定められているのです。
 

まとめ

今回は、2020年4月から施行された「子の引き渡しの強制執行」についてご紹介しました。
法改正により実効性が期待されている子の引き渡しの強制執行ですが、専門知識や煩雑な手続きが必要になります。
離婚後の親権について検討している場合は一度、弁護士に相談してみることをおすすめします。

著者

後藤千絵先生
弁護士

後藤ごとう 千絵ちえ

京都府生まれ。滋賀県立膳所高校、大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に総合職として入社。

30歳を過ぎてから法律の道を志し、2006年に旧司法試験に合格。

08年に弁護士登録し、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所を設立。

離婚や相続など、家族の事案を最も得意とし、近年は「モラハラ」対策にも力を入れている。

著作に「誰も教えてくれなかった離婚しないための結婚の基本」(KADOKAWA)、『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』(三笠書房)がある。

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