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離婚する場合に弁護士に依頼するタイミングはいつですか?

2020-06-10
離婚

離婚は夫婦間の問題。夫婦で話し合い決着が図られれば、第三者の介入は当然不要です。
しかし、話し合いがスムーズにいかない場合やそもそも相手の顔をみるのもイヤという場合には、弁護士があなたの後ろ盾となって、あるいは、あなたに代わって進めていくことができます。
では、その弁護士に依頼するのはどのタイミングがよいのでしょうか?「弁護士といえどもやはり他人、他人に夫婦のことを知られたくない」「離婚後の生活を考えたら1円も無駄にできない」等、弁護士に依頼することを躊躇することもあるでしょう。
そこで、効果的な依頼タイミングについて、まずは、時系列に従って解説していきます。
 

時系列

離婚は通常、①当事者の合意で成立する協議離婚、次いで②専門家を交えて話し合う離婚調停、最終的には③裁判所の判断に委ねる離婚訴訟という段階を追っていきます。
 

①協議離婚

日本においては、多くの諸外国と異なり、当事者の話し合いのみで離婚ができます。
たとえば、お隣の韓国では、離婚する場合にはまず、家庭裁判所で離婚の意思を表明し、6ヶ月間経過後、再度家庭裁判所へ出頭して、離婚意思を確認してからやっと離婚ができるという具合です。日本の協議離婚制度は国際法的に見てかなり特異なものなのです。
この特異な制度を最大限利用して、当事者のみの話し合いで離婚すれば、時間的にも経済的にも大幅に節約できます。
 

離婚条件についてもめない場合

離婚の話し合いの中には、離婚をするかしないかという問題だけではなく、養育に関する事項や財産分与、さらには慰謝料等の離婚条件が含まれます。これらに関して話し合いでまとまった場合にはその内容を離婚協議書として作成し、公正証書にして保存するのが賢明です。強制執行についての認諾文言を付与していれば、将来不払い等が発生した場合には、時間のかかる裁判手続で判決を得る必要なく、すぐに強制執行して金銭債権の回収を図ることができます。
このため離婚協議書を作成するにあたっては、弁護士等の専門家に依頼しましょう。協議の内容の精査もでき、作成も確実です。徹頭徹尾当事者だけで話し合うとしても、この点に関しては、弁護士に依頼することをお勧めします。
 

離婚条件でもめた場合

これに対して、離婚の意思が明確であるものの、以下のような条件が合わない場合、弁護士に依頼するのがよいでしょう。
 

  • 財産分与の対象となる財産を明らかにせず、また、分配金額が合わない
  • 慰謝料請求に応じない
  • 養育費の金額が決まらない
  • 面会交流の回数が決まらない
  • 親権者、監護権者決まらない

 
このような場合にも弁護士に依頼することをお勧めします。弁護士が過去の裁判例を基準に妥当な金額・条件での交渉をして、短期間での解決を目指します。もちろん、当事者相互にそれぞれの弁護士を付けるべきでしょう。相手に弁護士が付いたからといって、無茶な主張はしてこないにしてもこちらの利益にまでは配慮しないのが通常です。
 

②離婚調停

離婚の合意やその条件について話し合いがまとまらない場合に、いきなり弁護士に依頼するのに抵抗があったり、弁護士でなくとも専門家が入れば話し合いができると思う場合は、家庭裁判所での調停を申立てましょう。
そのうえで、自分ひとりでは調停を進めていくことが不安になった場合や、調停での話し合いがもはや困難であると判断した場合には、その段階で弁護士に依頼するのもよいでしょう。実際、調停の途中や、一方的に調停を申し立てられてから弁護士に依頼する方は多いです。
離婚調停は調停委員という第三者が介入した話し合いの場ですが、調停委員があなたに味方して有利に交渉を進めてくれることは期待できません。また、裁判官のように公平にジャッジするわけでもありません。できれば調停に入る前から弁護士に依頼することが望ましいですが、必要と感じた場合には、その時点で直ちに弁護士に依頼しましょう。
 

③離婚訴訟

相手がまったく離婚する意思がなく話し合いを避けている場合、さらに、所在不明の場合には、離婚訴訟を視野に入れて弁護士に依頼すべきです。 
 

離婚ができるかどうかの判断

相手がまったく離婚する意思がない場合は、以下の離婚原因がないと離婚できません。
 

  • ①不貞行為
  • ②悪意による遺棄
  • ③生死が3年以上不明
  • ④強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
  • ⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

 
これらひとつでも該当すれば、裁判上で離婚できますが、どれに該当するか判断できないときは、弁護士に相談してください。
 

裁判の立証に向けた準備

上記の判断ができたとしても、それを裁判上で立証する必要があります。そのための証拠をどのように集めてよいのかわからないときも弁護士に相談してください。実際、離婚原因の事実はあるのがわかってはいるものの、どう証拠を集めていけばよいのかわからないという場合に、依頼を受けるケースが最も多いです。

以上、時系列に従って解説しました。
では、次に具体的な事案における依頼のタイミングについて解説します。
 

事案ごとのタイミング

離婚原因の中でも依頼を多く受けるのは、①の配偶者が不貞行為(浮気・不倫)したとき、⑤の婚姻を継続し難い重大な事由があるとき、その中でも具体的には、ドメスティック・バイオレンス(DV)と、モラルハラスメント(モラハラ)です。
 

不貞行為

配偶者の不貞行為の場合、探偵に依頼して、不倫現場の決定的な写真が手に入ったとき、LINE、メールなどのやりとりの写真を撮るなど、ある程度の証拠を収集した時点で弁護士に依頼するのがよいでしょう。証拠なくしては離婚請求も慰謝料請求もままなりませんが、実際の証拠集めは配偶者の最も近くにいるあなたにかかっているからです。もし探偵に依頼する場合は、その提携している法律事務所を紹介してもらうことで、こちらのペースで離婚が進みやすくなります。
 

DV

DVの場合、暴行シーンの隠し撮りや医師による診断書等をある程度証拠を集めてから、と構えていては遅きに失します。まずは何よりも身の安全を考える必要があります。
DVを受けた場合には直ちに警察や配偶者暴力相談支援センターに連絡をとると同時に、裁判所に対して、接近禁止命令を中心とした保護命令申立てを行います。この申し立てに際しては、身体への暴力及び今後も重大な危害を受けるおそれが大きいことを証明する必要があります。これらについて弁護士がサポートすることができます。そして、今後の離婚や慰謝料請求に向けた活動に向けても、いち早く準備します。
 

モラハラ

モラハラの場合、精神的虐待があまりにも長くなると抵抗できないほど疲労困憊することが懸念されます。抵抗できるうちに、弁護士に依頼すべきです。裁判所に対する保護命令申立ても、DVと同様、弁護士がサポートします。
DV、モラハラに共通することですが、被害配偶者は「離婚さえできれば」「この状態から逃れさえすれば」との思いから、離婚後の生活への準備が不十分なまま離婚に踏み切るケースがよくあります。財産分与や慰謝料請求等、権利として行使できるものは行使するという当然のことを実現するためにも、早い段階での専門家のサポートが鍵になります。
 

最後に

夫婦の形は千差万別、当然、離婚の形も千差万別です。ネット情報や経験者からのアドバイスが必ずしもあなたの離婚にあてはまるとは限りません。多くの離婚裁判例に精通し、日常的に交渉業務にあたっている弁護士が、まずはあなたの身の安全を確保し、離婚のみならず、離婚後の生活に向けた新しい大きな一歩をお手伝いします。

著者

後藤千絵先生
弁護士

後藤ごとう 千絵ちえ

京都府生まれ。滋賀県立膳所高校、大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に総合職として入社。

30歳を過ぎてから法律の道を志し、2006年に旧司法試験に合格。

08年に弁護士登録し、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所を設立。

離婚や相続など、家族の事案を最も得意とし、近年は「モラハラ」対策にも力を入れている。

著作に「誰も教えてくれなかった離婚しないための結婚の基本」(KADOKAWA)、『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』(三笠書房)がある。

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