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財産分与に請求の期限はありますか

2020-06-01
離婚

財産分与とは

日本の民法では、夫婦財産について別産制を基本的に採用し、婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で所有する財産)とする建前です。しかし、夫婦間に経済格差があり、一般的には、夫の所得のほうが妻側の所得を上回る家庭が多いことから、不動産を中心として夫名義の不動産のほうが妻を上回ることが一般的です。そこで、こうした夫婦間の財産格差を、離婚にあたって調整するのが財産分与の制度であり、夫婦間の実質的共有財産の清算、離婚後の扶養等の観点から、一定額の財産給付を求めることができるとするものです。
 

財産分与は、離婚と同時に決めなければいけない?

離婚にあたっては、子どもの問題や、財産の問題など、事前に決めておかなければならないことが多くあるイメージです。
しかし、離婚をするにあたって、必ず決めなければならないのは、子どもがいる夫婦の場合、親権だけです。子どもがいない夫婦の場合は、何も取り決めをしなくても、離婚ができるということになります。
離婚にあたって問題となる要素としては、おおまかには、①親権、②養育費、③面会交流、④財産分与、⑤慰謝料、⑥面会交流、⑦年金分割があります。このうち、①だけは取り決めなければ離婚をすることができませんが、それ以外のものについては、決めなくてもいい、あるいは、離婚をした後に決めてもいいということになります。
したがって、財産分与についても、離婚に先立って決めなくても、ひとまず離婚を成立させて、そのあとで考える、ということもできるのです。
  

財産分与の請求期限

では、離婚をしたあと、財産分与はいつしてもよいのでしょうか。
実は、財産分与には期限があり、それを過ぎてしまうと財産分与を請求することができません。
財産分与は、離婚をしてから2年以内に請求しなければ、請求することができなくなってしまうのです(民法768条2項ただし書)。
ここにいう「請求」というのは、単に口頭で伝えたり、手紙を送ったりするだけでは効果がなく、家庭裁判所に財産分与調停ないし審判を申し立てる必要があります。
離婚してから2年経ったあとに財産分与調停を起こしても、期限切れということで却下され、審理してもらうことはできません。
 

財産分与の取り決めを後回しにするリスクは?

財産分与を離婚後にするリスクは、上記の期限切れのリスク以外にもあります。
夫婦が互いに離婚を望んでいる場合には、離婚という共通のゴールに向けて、互いに譲歩をしやすいですが、そのゴールが達成されたあとになってしまうと、1円でも多く取りたい側と、1円でも少なく済ませたい側との真っ向からの対立になってしまうので、紛争が長期化しやすいというリスクがありまあす。
他方で、財産分与を後回しにすることは、メリットもあります。
離婚後は、婚姻費用を支払わずに済むため(子どもがいれば、離婚後に養育費を支払う必要がありますが、一般的に、養育費のほうが婚姻費用より安いです)、婚姻費用がかさむという負担なく、じっくりと財産分与について協議をする余裕が生まれます。
 

財産分与が問題になる事案は、弁護士に相談を!

財産分与は、期限だけでなく、その計算方法や、財産分与対象財産になるかどうかの判断方法など、さまざまな問題をはらんでいます。
どうせ2分の1の財産をもらえる・あるいは渡せば済む、と軽く考えず、まずは弁護士にご相談ください。

著者

後藤千絵先生
弁護士

後藤ごとう 千絵ちえ

京都府生まれ。滋賀県立膳所高校、大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に総合職として入社。

30歳を過ぎてから法律の道を志し、2006年に旧司法試験に合格。

08年に弁護士登録し、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所を設立。

離婚や相続など、家族の事案を最も得意とし、近年は「モラハラ」対策にも力を入れている。

著作に「誰も教えてくれなかった離婚しないための結婚の基本」(KADOKAWA)、『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』(三笠書房)がある。

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