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寡婦控除とは

2020-04-30
離婚

寡婦・寡夫控除とは

寡婦・寡夫控除とは、離婚や配偶者と死別した後再婚しておらず、かつ、生計を一にする子供がいる人について、所得から一定額を控除できるという税制優遇制度です。
 

制度の目的

配偶者との離婚や死別後に扶養家族を抱えた者は、通常、扶養家族のために時間をとられます。このため収入を上げるために労働時間を増やすことはできず、その反面、特別の生活費もかかり、結果として経済的に困窮する状態に陥りやすくなります。実際、平成28年の厚生労働省の調べによりますと、母子家庭の平均年収は243万円、父子家庭では420万円となっており、とくに母子家庭では厳しい経済状況であることがうかがわれます。

そこで、できるだけ税制面で優遇しようというものです。
 

これまでの経緯

寡婦控除は昭和26年度税制改正で創設されました。当初は税額を計算する前の所得から控除される所得控除でしたが、その後、課税所得金額から算出された所得税額から控除する税額控除に変更され、さらに昭和42年に再び所得控除に改められました。寡婦控除は普通の人よりも経費がかさむことを考慮して設けられたものであるにもかかわらず、物価上昇などに伴う経費の増加を控除額に反映するのが困難というのが主な理由でした。

次いで昭和47年には、寡婦控除の扶養親族要件が死別の場合に限り撤廃されました。亡夫の家族についても多くの負担を要するという事情を考慮したものです。

昭和56年度の税制改正では寡夫控除が追加として創設されました。これは父子世帯も増え始めたことを背景にします。

平成元年には特別寡婦控除が創設され、低所得の母子家庭の負担軽減を狙いとしています。
 

寡婦控除・寡夫控除の要件

受給者の性別 配偶者の状況 再婚の有無 扶養親族 受給者本人の所得 適用される控除
女性 死別・離婚・生死不明 再婚せず 同一生計の子がいる 500万円以下 特別寡婦
500万円を超える 寡婦
死別・離婚・生死不明 再婚せず 総所得金額等が48万円以下の同一生計の子がいる 制限なし
子以外の扶養親族がいる
死別・生死不明 再婚せず 同一生計の子や扶養親族がいない 500万円以下
男性 死別・離婚・生死不明 再婚せず 総所得金額等が48万円以下の同一生計の子がいる 500万円以下 寡夫

給料のみなら年収678万円以下

以上の要件を満たした場合の控除額は以下の通りです(改正前)。

所得税 住民税
寡婦控除 27万円 26万円
寡夫控除
特別寡婦控除 35万円 30万円

具体的どれぐらい軽減されるか見てみましょう。

「寡婦(寡夫)控除」とは所得から一定額を差し引くという所得控除の1つです。

たとえば課税所得額が200万円の寡婦(寡夫)の場合、所得税率10%、住民税率10%となっています。ちなみに、課税所得額とは収入から必要経費、さらに所得控除額を差し引いた金額です。

  • 所得税 27万円×10%=2万7000円
  • 住民税 26万円×10%=2万6000円

合計56万3000円の節税となります。
 

問題点

これらの控除制度は、以下の問題点がありました。

  • ・寡婦控除・寡夫控除ともに婚姻歴のあるひとり親を前提としており、婚姻歴のない未婚のひとり親では利用できない
  • ・寡婦(女性)についてのみ特別控除が認められており、寡夫(男性)との間で不平等

 

令和2年度の税制改正

これらの問題に対処すべく、令和2年度税制改革では、婚姻歴や性別に関係なく子どもがいるひとり親については35万円が控除される「ひとり親控除」が導入されました。これにより、寡婦控除は子供のいない寡婦についてのみ適用、寡夫控除は廃止ということになります。

子ども 性別 総所得金額 控除額
ひとり親控除 あり 問わず 500万円以下 所得税35万円

住民税30万円

寡婦控除 なし

(*1)

500万円以下

(*2)

所得税27万円

住民税26万円

(*1)寡婦控除は扶養親族及び配偶者に関する要件があります。

  • ・扶養親族がいない場合で配偶者と死別
  • ・子以外の扶養親族いる場合で配偶者と死別または離婚

いずれかに該当する必要があります。

(*2)総所得金額が500万円を超える人は従来の寡婦控除が受けられなくなりました。
 

事実婚は対象外

令和2年度の税制改正でも、ひとり親控除も寡婦控除も住民票に「夫(見届)」「妻(見届)」となっている事実婚を対象外としています。これは、お互いが扶養し合っているということで、税制優遇を図る必要がないとのことです。
 

いつから

新制度は、給与計算の源泉徴収事務の場合では令和2年分の年末調整以降から、個人事業主の確定申告では令和2年分の確定申告から適用されます。

以上の控除制度は年末調整のとき、又は、確定申告のときに申告が必要です。忘れないようにしましょう。

著者

後藤千絵先生
弁護士

後藤ごとう 千絵ちえ

京都府生まれ。滋賀県立膳所高校、大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に総合職として入社。

30歳を過ぎてから法律の道を志し、2006年に旧司法試験に合格。

08年に弁護士登録し、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所を設立。

離婚や相続など、家族の事案を最も得意とし、近年は「モラハラ」対策にも力を入れている。

著作に「誰も教えてくれなかった離婚しないための結婚の基本」(KADOKAWA)、『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』(三笠書房)がある。

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