扶養される配偶者や子どもがいる場合、毎年の年末調整または確定申告で扶養控除を申告でき、所得税の負担を軽減できます。
ただ、夫婦が離婚している場合、支払い済みの養育費は扶養控除の対象になるのか気になる方は多いでしょう。
今回は支払い済みの教育費は扶養控除の対象となるのか、解説していきましょう。
離婚して別居しても扶養控除の対象になる?
扶養控除とは、数ある所得控除の一つです。
親族に扶養される人がいる場合に申告が適用され、一定額の所得にかかる税金が控除されます。
一般的に家庭を持つ人が申告する控除ですが、離婚により籍が外れた場合はどうなのでしょうか?
実は、離婚により別居の子どもや親も扶養に入れ、申告することが可能です。
扶養控除の適用について
子どもや老齢の親などの扶養控除の適用に同居の条件は絶対ではありません。
子どもが生活するためのお金や学資金、医療費などの教育費を送金も扶養の実態に含まれるので、別居でも扶養控除の対象となります。
具体的な所得控除額
扶養される親族は年齢によって種類があり、所得控除額も変わってきます。
- 16歳~18歳の一般扶養親族…38万円
- 19歳~22歳の特定扶養親族…63万円
- 70歳以上の別居の親…48万円
つまり、離婚後に別居する子どもの年齢に応じて、最大控除額は38万円から63万円にもなります。
ここで気になることは、16歳未満の子どもの扱いでしょう。
幼い子どもを育てるためにも養育費は必要です。
離婚後に毎月養育費を支払っているのだから、何らかの控除があっても良いのではと思う人も多いでしょう。
実は、16歳未満の子どもについては所得税の扶養控除は適用されません。
その代わりに、児童手当が支払われています。
所得税の税率と扶養控除の関係
離婚後に別居する子どもに養育費を送金すると、手取り額はどの程度増えるのでしょうか?
まず、課税対象所得ごとの所得税の税率をチェックしてみてください。
- 195万円以下…5%
- 196~330万円…10%
- 331~695万円…20%
- 696~900万円…23%
- 901~1800万円…33%
- 1801~4000万円…40%
- 4001万円以上…45%
扶養控除により課税対象所得が下がると、所得税率のパーセンテージが低くなるため、実際に支払う税金は少なくなります。
例えば、課税の対象となる所得が950万円の場合、税率は33%です。
しかし、大学生の子どもに養育費を送っている場合、63万円の控除により所得は887万円となります。
そうなると、税率は33%から23%に下がることになります。
加えて、所得の10%となる住民税も下がるのでさらなる節税につながり、同時に手取りの金額もアップすることが可能です。
支払い済み養育費の扱い
ただし、子どもの養育費を一括で支払った場合には、扶養控除の適用外となります。
扶養控除が適用されるためには、実際に扶養の事実があることが前提です。
しかし、一括で支払った養育費は、日々の扶養をするお金とはみなされず、扶養控除が認められません。
養育費で扶養控除を受けたい場合は、継続的に送金する方法を選んでください。
逆に養育費を受け取る側が相手の扶養控除の適用に快く思っていない場合、離婚の話し合いの中で養育費を毎月支払ってもらうのではなく、一括で請求する方法を選ぶと阻止できます。
扶養の取り合いトラブル
子どもの扶養は、1人の納税者に対して控除となり、元夫と元妻の双方が扶養控除を受けることは不可能です。
養育費の扶養控除の取り合いが起きた場合、どのようなトラブルが起きるのか見ていきましょう。
追徴課税
元夫と元妻がお互いに子どもを扶養に入れて控除を受けていた場合、どちらかが不足分の税金を支払わなければなりません。
不足分の税金を支払うことを、追徴課税と言います。
例えば、子どもを扶養に入れることを元配偶者が納得しない場合や、離婚時の話し合い不足でお互いが子どもを扶養に入れていた場合などが考えられます。
お互いに子どもの扶養控除の書類を提出しても、扶養控除が重複適用されることはありません。
税務署から支払い不足を指摘され、どちらかが追従課税されることになります。
追徴課税されるのは、原則的には申告が遅かった方です。
これは、早く申告した人が控除適用される制度だからであるものの、状況次第では所得額が多い方が扶養控除の適用となる場合もあります。
異議申し立てと税務訴訟
追徴課税に納得できない場合は異議申し立てが可能です。
異議申し立てを行うと、請求人に対する処分内容が見直されます。
税務署長による見直しでも処分内容が変更されない場合には、再審査も求められます。
再審査の請求は、国税不服審判所長に対して行います。
再審査の結果に納得できなかった場合は税務訴訟となるので、裁判所の判断を待ちましょう。
扶養控除に必要な手続き
離婚により新たに扶養控除を受ける場合に必要となる手続きは以下の通りです。
「給与所得者の扶養控除申告書」の提出
会社から給料をもらっている人は、会社に「給与所得者の扶養控除申告書」を提出し、扶養の異動について申告します。
毎年、年末が近づくと提出する書類なので見慣れている人も多いでしょう。
その年の最初の給与を受け取る前日までに提出する書類です。
すでに提出してある申告書の内容から異動がある場合、異動後の最初の給与支払い日の前日までに申告書を提出する必要があります。
添付する書類もあるため、確認しながら書類を用意してください。
16歳未満の扶養親族申告
扶養控除が廃止された0歳以上16歳未満の子どもについて、扶養親族の申告が必要な点に注意が必要です。
実は、非課税限度額の算定には16歳未満の扶養親族申告が必要となっています。
ただし、自営業の人は以上の申告書の提出や手続きなどは不要です。
自営業の人は、毎年の確定申告の際に扶養控除に関する内容を記載してください。
養育費を受け取ると税金がかかるの?
元配偶者から養育費を受け取る場合、養育費に対して所得税や贈与税などがかかるのかが気になる人もいるでしょう。
養育費は、子どもの生活費・医療費などを離婚後も分担するために支払う性質のお金です。
法律上の扶養義務で支払うお金であり、子どもの成長のために必要なお金なので非課税となります。
そのため原則として、養育費は受け取っても課税の対象とはなりません。
また、所得税についても養育費を支払った元配偶者が得た所得からすでに支払済みなので、養育費を受け取った親権者に所得税の支払いは不要です。
養育費を受け取ると、受け取った側は収入と思いやすいものの、あくまでも子どもに渡しているお金と考えましょう。
ただし、養育費の金額によっては贈与税の課税対象となる場合もあります。
特に、養育費を一括で受け取る場合など、支払いのタイミングで子どもに必要な限度を超えていると判断されれば、贈与税が課税される可能性は大きいです。
一括で受け取り、支払い済み養育費として離婚相手に扶養控除を渡したくないと考えている場合は注意してください。
自分が教育費を払う立場であれば、まずは元配偶者ときちんと話し合い、理解を得て勤務策に扶養控除を申し込むようにしましょう。
扶養控除は子どもを扶養するどちらか片方しか適用されません。
そのため、理解を得ずに申告すると申告が遅れた場合、税務署より追徴課税を求められる可能性があります。
また、養育費を一括で支払った場合は扶養控除の適用外になることを念頭に置いておきましょう。