子どものいる夫婦が不倫をして夫と妻が離婚した場合には、不倫をした方が養育費を支払うことになります。
そこで疑問になることが、「養育費はいくら払わないといけないのか?」という問題です。
お金に余裕があれば、さほど気にならないのかもしれませんが、大半の方は金額が気になるでしょう。
養育費として支払う金額は、国が作成した養育費算定表にまとめてあります。
養育費算定表は、毎月の養育費の支払額を定めた表です。
ここでは、養育費算定表の基礎知識と見方について解説していくので、理解しておきましょう。
養育費について
養育費について、しっかりと理解していない方も多いです。
養育費を受け取るためにも、十分に理解することが肝心です。
養育費とは
養育費算定表の見方に入る前に、まず養育費について説明します。
養育費とは、子どもが20歳になるまでの間、必要な衣服費や医療費、食費、教育費などかかる全てのお金のことを指します。
養育費を支払う義務があるのは、親権を持たない側です。
親権とは未成年の子を保護して育て、財産を管理するなど子どもに代わって法律行為をする権利・義務のことを言います。
法律行為と言うと難しく聞こえますが、スーパーで買い物をする時の「買いたい」「売りたい」という行為も、お金のやり取りが発生するので一つの法律行為です。
法律では、養育費を支払う側を「義務者」と呼び、受け取る側を「権利者」と呼びます。
養育費の支払いは分割もしくは一括となっており、多くは分割での支払いとなります。
しかし、権利者としてはお金の支払いが滞ることを恐れています。
義務者に相当の貯金があり、金銭的に余裕がある場合は、一括で請求するケースもあるようなので覚えておきましょう。
養育費は不倫した側に渡すこともある
養育費は不倫しなかった側だけでなく、不倫した側に支払うこともあります。
倫理的な価値観からすれば「不倫した側にお金を払うなんておかしい」と思うかもしれませんが、養育費と不倫問題は別に考えるべきということが法律的な見解です。
なぜなら、養育費は子どもを育てるために必要なお金であり、不倫をしたか、していないかの問題は関係ありません。
確かに、不倫した人間にお金を預けることに、抵抗があるパートナーもいるでしょう。
しかし、養育費を送らないと子どもの教育費や食費がまかなえなくなる可能性もあります。
子どもが将来に向かって不自由なく暮らせるように、養育費はしっかりと支払う必要があります。
養育費算定表の見方
次に養育費算定表の見方をご紹介していきます。
基礎知識も掲載しているので確認しておきましょう。
養育費算定表の基礎知識
養育費算定表とは、養育費の支払額を示した表のことを指します。
養育費算定表を使えば、子どもの人数や年齢、父母の収入額から養育費を簡単に算出できます。
養育費算定表は、裁判官の研究結果をもとに作成されたもので、裁判所のホームページから確認できます。
ページは全部で9枚ありますが、国や政府のデータに見慣れていない方であれば、小さな文字と数字に少し抵抗があるかもしれません。
しかし、養育費算定表の見方は意外にも簡単です。
ポイントさえ分かっていれば、誰もがすぐに支払う(受け取れる)養育費を調べられます。
養育費算定表を見る3つのポイント
養育費算定表を見る時のポイントは、以下の3つです。
- ①子どもの人数・年齢に該当するページを開く
- ②義務者(養育費を払う人)と権利者(受け取る人)の年収を確認する
- ③金額を確認する
上記項目について、詳しく説明していきます。
①子どもの人数・年齢に該当するページを開く
養育費算定表はこちら
養育費算定表は全部で9枚ありますが、見るべき箇所は自分の子どもの人数と年齢が一致するページだけです。
「子ども一人」のページは2枚あり、表1は0~14歳まで、表2は15~19歳までが対象です。
「子ども二人」のページは3枚あります。
表3は2人とも14歳以下、表4は1人目が15~19歳で、2人目が14歳以下、表5は2人とも15~19歳の場合です。
「子ども三人」のページは4枚あります。
表6は3人とも0~14歳
表7は1人目が15歳~19歳、2・3人目が0~14歳
表8は1・2人目が15~19歳、3人目が0~14歳
表9は、三人とも15~19歳の場合です。
②義務者(養育費を払う人)と権利者(受け取る人)の年収を確認する
自分がどの表に当てはまるか分かったら、次に義務者と権利者の年収を見ていきます。
自分が養育費を支払う側であれば義務者で、もらう側であれば権利者と覚えておきましょう。
表は縦軸が義務者で横軸が権利者です。
どちらも年収は「給与」と「自営」の2つに分かれています。
会社員やアルバイトであれば給与の欄を確認し、農家など自分で商売をやっている自営業者の場合には自営の欄を確認します。
③金額を確認する
最後に金額を確認します。
養育費を支払う人ともらう人の給与(または自営)の年収が、クロスするところを確認します。
そこに記載されている金額が、養育費の相場です。
具体的に養育費算定表で計算してみる
養育費算定表の基本的な見方が分かったところで、具体的な計算をしてみましょう。
例えば、養育費を支払う人(父)が会社員であり、年収が650万円あるとします。
子どもは10歳が一人いて、妻が養育費の受取人です。
妻は、パートで年収150万円の給与があります。
この場合、父が義務者に該当し、母が権利者です。
見るべき表は、表1の養育費・子1人表(子0~14歳)ですので、ここで該当する金額を探していきます。
縦軸の義務者は給与650万円のところに該当し、横軸の権利者は給与150万円のところに該当します。
そのまま両者が交わる点を探していくと、養育費は6~8万円が目安金額であること分かるでしょう。
養育費算定表は数値が細かいので、給与と自営を読み間違えないように注意してください。
この見方が分かっていれば他の表でも同じですので、自分の子どもの人数と年齢に合わせて、表を使いこなしていきましょう。
養育費算定表は改正により、養育費が増額された
2019年12月に公表された養育費算定表は、16年ぶりに改定されたものです。
新算定表で何が変わったかというと、ほとんどのケースで養育費が増額されたことです。
特に給与の高い世帯での増額が目立ち、中流世帯以下での金額はそれほど変わっていません。
高所得世帯では4万円増額されていても、中流世帯以下では多くても2万円の増額といったところです。
現実的に考えて、所得の低い義務者が何年間も高額な養育費を支払い続けることは困難なので、国も大幅な増額はできなかったのでしょう。
例えるならクレジットカードと似たようなもので、低所得者に対して支払う額が増えると、収入と支出のバランスが取れず、未返済となるケースも多くなります。
養育費算定表の金額はあくまで目安であるため、個別のケースで適切な金額を設定することが望ましいとされます。
養育費算定表の見方は、それほど難しいものではありません。
子どもの人数と年齢から該当する表を見て、養育費を支払う人(義務者)ともらう人(権利者)の給与または自営の年収を確認していきます。
そこで両者が交わる点が、養育費の目安金額です。
養育費は子どもが将来に向かって、不自由なく暮らすためのお金であり、支払い義務があるのは親権を持たない側です。
養育費算定表はあくまで一般的な目安金額であることを忘れずに、それぞれの生活事情も含めて、具体的な養育費額を決めていくと良いでしょう。