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離婚届の代書を行った場合のリスク

2020-01-08
離婚

当事者同士の話し合いで離婚を決める「協議離婚」をする場合、必ず離婚届の提出が必要になります。
ところで、何らかの事情で配偶者の一方が離婚届にサインできない場合に、離婚届を誰かに代わりに書いてもらうことはできるのでしょうか。ここでは、そもそも離婚届の代書ができるのか、さらに離婚届の代書を他人に頼んだ場合のリスクについて紹介します。

離婚届には夫婦の署名・押印が必要

離婚届は、話し合いで離婚する場合(協議離婚する場合)に、市町村役場に提出する書類です。
夫婦双方に離婚の意思があり、かつ離婚届を役所に提出したときに、離婚が成立します。
離婚届には署名・押印欄があり、夫・妻それぞれが署名・押印する必要があります。

代書した離婚届は有効か

離婚届には当事者の署名・押印が必要です。
それでは、夫婦の片方が離婚届に署名してくれない(できない)といった場合、ほかの誰かが代書して提出してもいいのでしょうか。
以下、ケース別に紹介します。

配偶者に代書を頼まれた場合

まず、配偶者自身に代書を頼まれたケースです。配偶者に離婚の意思があるものの、何らかの事情で離婚届に署名ができない、あるいは「代書してほしい」と配偶者に直接頼まれたといったシチュエーションがあてはまります。
こうしたケースでは、戸籍法で離婚届の代書が認められているため、離婚届を代書することは可能です。
ただし、後で同意の有無をめぐってトラブルになる可能性もありますので、一筆書いてもらうなどの対策が必要になります。

配偶者に黙って代書した場合

一方、配偶者の同意を得ないで、勝手に離婚届を書いた場合は問題になります。
まず、配偶者に離婚の意思がないのにも関わらず、離婚届を書いて提出した場合、離婚成立に必要な条件である「離婚の意思」がありません。
したがって、提出した離婚届が受理されたとしても、離婚は無効です。
また、相手に離婚の意思があったとしても、代書に同意していない場合もやはり離婚届は無効になってしまいます。
ちなみに、相手の同意を得ないで離婚届に勝手に代書する行為は、刑法上の犯罪にも該当しうる違法な行為です。離婚届を代書するときは、必ず相手の同意を得てからにしましょう。

配偶者が離婚に同意してくれない場合の対処法

先ほども紹介した通り、相手の同意を得ないで書いた離婚届は無効です。
もっとも離婚する方法は、離婚届を使う協議離婚だけではありません。離婚調停や裁判離婚といった、裁判所での手続きによる離婚であれば、離婚届なしに離婚することができます。
もし相手が離婚に同意していないような場合は、離婚届を使わない方法で離婚を目指すことを考えましょう。

離婚でもめそうなら弁護士に相談するのもおすすめ

協議離婚であれば、当事者双方の同意と離婚届の提出だけで離婚できます。ただ、離婚届を勝手に代書することはできないため、配偶者の同意が得られない場合は協議離婚で離婚しようとするのは難しいかもしれません。
もし離婚するかどうかをめぐって夫婦間でもめそうであれば、一度弁護士にご相談ください。当事者同士の話し合いで離婚が決められなかった場合、離婚調停、離婚裁判といった裁判所での手続きを検討する必要があります。法的な知識が求められる場面もありますので、有利な条件で離婚を進めるためにも法律の専門家のサポートは不可欠です。
離婚を検討し始めた段階で、一度相談されてみてはいかがでしょうか。

著者

後藤千絵先生
弁護士

後藤ごとう 千絵ちえ

京都府生まれ。滋賀県立膳所高校、大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に総合職として入社。

30歳を過ぎてから法律の道を志し、2006年に旧司法試験に合格。

08年に弁護士登録し、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所を設立。

離婚や相続など、家族の事案を最も得意とし、近年は「モラハラ」対策にも力を入れている。

著作に「誰も教えてくれなかった離婚しないための結婚の基本」(KADOKAWA)、『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』(三笠書房)がある。

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