当事務所に寄せられたご質問にお答えいたします。
先日、妻が浮気していることがわかりました。相手は高校の同窓会で再会した既婚男性のようです。妻は反省しているし、子どものために今のところ離婚は考えていませんが、相手の男性に対して慰謝料の請求を検討しています。しかし、相手の男性の奥さんも私の妻に対して慰謝料を請求する権利がありますよね。この場合、どのようにして慰謝料請求をすればいいのでしょうか?なお、相手の奥さんは激怒しているらしく、離婚を前提に別居を始めるそうです。
既婚者同士の不貞行為である「ダブル不倫」は、通常の不倫とは違い、被害者が2人います。ゆえに紛争解決までの流れがややこしく、当事者同士の解決が難しいのが現実です。ダブル不倫では、慰謝料の請求はどのようにすればいいのでしょうか。
離婚しない場合は慰謝料の請求は慎重になるべき
今回、ご質問をいただいた男性は、離婚するつもりはないとのことですから、相手の男性に対して慰謝料を請求するのはあまりおすすめしません。
具体例を交えて説明します。A男とB子夫妻、C男とD子夫妻のうち、B子とC男が不倫関係にあったとします。不倫が双方の夫婦にばれて、A男はB子と離婚するつもりはないが、D子はC男と離婚するとしましょう。
かりにA男がC男に対して慰謝料を請求する場合、D子もB子に対して慰謝料を請求することが予想されます。そして、D子に払う慰謝料はA男B子夫妻の共有財産から出費するため、不貞行為をしていないA男にとっても痛手となるわけです。
反対に、C男D子夫妻はどうでしょう。離婚すれば夫婦の共有財産はなくなりますから、A男から慰謝料を請求されてもC男が一人で支払うので、D子の懐に何ら影響はありません。それだけでなく、C男の浮気がきっかけで離婚となった場合は、D子はC男に対して慰謝料の請求権、そしてC男と不倫したA子に対しても慰謝料の請求権を持つことになるのです。
ダブル不倫の場合、確かに慰謝料もダブルで発生しますが、離婚するかしないかで慰謝料の金額や支払う側の懐事情が大きく変わってきます。
ダブル不倫でも慰謝料がダブルにならないケース
かりに、B子とC男の不倫した事実をA男は知っているがD子はまだ知らない場合、A男はC男に慰謝料請求ができます。不倫をしている既婚者は、配偶者に不倫の事実を知られたくないはずですから、不倫の事実を口外しないことを約束して慰謝料を請求することができます。
反対にC男の不倫を知らない以上、D子はB子に対して慰謝料を請求できません。すなわち、D子が不倫の事実を知らなければ、A男にとっても慰謝料を請求できるメリットがあるのです。
ただ、今回ご質問をいただいた方の場合、すでに相手の奥様も不倫の事実を把握しているとのことなので、この方法で慰謝料を請求するのは難しいと言えます。
ダブル不倫を解決するために弁護士に相談を
では、ダブル不倫で離婚をしない場合は慰謝料の請求もできず、泣き寝入りをするしかないのでしょうか。たいていの方は金銭的なことを含めて、何らかの形で誠意を見せてほしいものです。そのためにはまずは当事者4人で話し合いの場を設け、謝罪してもらい、もう二度と会ったり連絡を取ったりしないという約束を取り付けるしかありません。
なお、話し合いの前に第三者である弁護士が、慰謝料やダブル不倫の解決方法について適切なアドバイスができますので、ぜひ一度ご相談ください。