親権は、子どもがいる夫婦の離婚協議において、最も争いになりやすい事柄のひとつです。
親権を巡り、ときには調停や裁判にまでもつれ込むこともあるでしょう。子どもは血のつながった「家族」であり、離婚して他人になる配偶者に渡したくないという感情が働くのも無理はありません。では、親権はどのように決まるのでしょうか。親権の考え方や親権を獲得する手続き・対処法などについて解説します。

「親権=親のための権利」ではない

まず、親権についての誤解を解いておきましょう。親権は、その名称から「親のための権利」と考えられがちですが、実際は異なります。親権は「未成年の子供を養育・監護する権利」ですが、その目的は「子どもの幸せ、利益を守ること」なのです。そのため、「親のための権利」というよりも「子どもの幸せを守る義務」という意味合いが強いわけです。これは、民法第820条にも明記されています。

“第820条 (監護及び教育の権利義務)
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。”

さらに親権は、離婚した者同士が共同で持つことはできません。必ずどちらか一方が獲得するもの、という考え方が主流です。これを「単独親権」と呼び、民法第819条2項に明記されています。

“民法第819条 (離婚又は認知の場合の親権者)
2.裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。”

親権を構成する要素は?

親権は「身上監護権」と「財産管理権」という2つの権利から成り立っており、それぞれの特徴は以下のとおりです。

○身上監護権(子供の社会的な成長や、身の回りの世話、教育などに関する権利)
・子どもの住む場所を決める権利(居所指定権、民法821条)
・叱ったり躾をしたりする権利(懲戒権、民法822条)
・就職や営業の許可を与える権利(就職許可権、民法823条)
・子供を監督し、保護し、教育する権利と義務(監護教育権、民法第820条)
・身分行為の代理権と同意権(民法第737条、775条、787条、804条)

○財産管理権(子どものお金の管理や用途に関する権利)
・子供の代わりにお金を管理する権利
・子供の売買契約など、法律行為に対する同意権

これら2つの権利をまとめて「親権」と言うことが一般的です。また、2つの権利が別々に認められることは稀で、通常はどちらか一方の親が持つことになります。ただし、特別な事情がある場合には、親権から身上監護権だけを取り出し、離婚した夫婦それぞれに認めるケースもあるでしょう。

親権を確定する要素とは?

これらを踏まえた上で、親権を確定する要素について解説します。親権は、夫婦が協議の上で合意すれば、その内容に基づいて決まります。しかし、協議で決まらないときには、審判や訴訟によって決定されるわけです。そのとき、以下のような事情を考慮する傾向にあります。

○親権を確定する際に考慮される要素
・父母の属性や資質(年齢、職業、収入、学歴、職歴、健康状態、生活態度など)
・監護の態勢が整っているか(監護実績、収入、借金、親族の支援体制、居住・教育環境)
・子どもに対する愛情の度合
・子どもの年齢や性別
・心身の発育状況
・兄弟姉妹不分離(兄弟姉妹とむやみに分離すべきではないという考え方)
・子どもがこれまで育ってきた環境にどの程度馴染んでいるか
・子どもの生活環境が変わったとき、どの程度馴染めるか
・子供の意思(特に15歳以上の子の親権では必須)
・その他、父母や親族との結びつきなど
・監護の継続性(現に子供の監護を継続している親が有利)
・母親優先(特に乳幼児には母親の監護と愛情が重要との判断)

日本では、特に「現状優先」かつ「母親優先」が強いといえるでしょう平成27年度の司法統計でも、調停や裁判で離婚した夫婦のうち、親権を獲得している母親は9割、父親は1割という結果が出ています。ただし、どのようなときでも母親側に親権が認められるわけではありません。以下のようなケースでは、父親側に親権が認められる可能性が高くなります。

1.すでに父親側での監護実績が一定以上(最低半年から1年以上)あり、特に問題が無いとき
2.虐待、不十分な養育環境、育児放棄など、妻側に問題があるとき

子どもとの生活をあきらめたくない方は弁護士へ

これまで紹介したように、親権を確定する要素は多岐にわたります。母親が有利であるものの、最近では父親側に親権が認められることも珍しくなくなりました。特に住まいや収入、資産などに不安がある場合は、親権が認められない可能性もあります。親権は親と子それぞれの事情を考慮しながら、総合的な判断で確定されるものです。ぜひ離婚に強い弁護士に相談しながら、計画性をもって対処していきましょう。